2012 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外光スペクトラムアナライザによる温室効果ガスカラム濃度の高精度計測手法の開発
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23340140
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
長濱 智生 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (70377779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 亮 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (80212231)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地球環境システム / 温室効果ガス / 地球観測 / リモートセンシング |
Research Abstract |
本研究は、小型の近赤外光スペクトラムアナライザ(OSA)を用いて太陽光吸収スペクトルの分光観測を行うことで大気中の温室効果ガスのカラム平均濃度を高い精度で測定する手法の確立することを目的としている。本研究期間中では、二酸化炭素(CO2)及びメタンの1.6~1.8μm帯の吸収スペクトルを測定して、それらの大気中のカラム平均濃度を1%以下の精度での測定を実現するために、波長分解能の補償手法やOSA観測スペクトルに特化したカラム平均濃度解析手法の開発、既存地上測器との長期同時観測による検証実験や多様な環境下での観測を通じて確立することを目指している。 本年度は、前年度に開発したOSA分光特性測定システムを用いて観測波長帯におけるOSAの分光特性の評価を継続した。連続光としてハロゲン光源、スペクトル光源としてホローカソードランプの光を、コア径や伝送特性の異なる3種類の光ファイバを用いてOSAに入射し、光強度や波長分解能等を測定した。その結果、観測に使用する予定のコア径62.5μmのマルチモードファイバを通してOSAに光を入射した場合、スペクトルの線幅がコア径9.5μmのシングルモードファイバのときと比較して約30%広がることが明らかとなった。この原因は、使用するOSAが入射側にスリットを備えておらず、光ファイバのコア径がそのままスリット幅となるためであることが分かった。また、OSAに入射される光強度が、元の強度の約半分であることも明らかとなった。そこで新たにコア径800μmで射出側に幅20μmのスリットを備えた光ファイバを試作して同様の測定を行ったところ、想定していた入射光強度と波長分解能0.05nm以下の性能が実現できた。さらに、これらを用いて太陽光のCO2吸収スペクトルを測定したところ、放射伝達シミュレーションによる結果とほぼ同程度の波長分解能によるスペクトルが取得できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OSAの性能評価の段階で十分な波長分解能が実現できていないこと及び入射光量が設計値よりも少ないことが明らかとなった。これに対して、追加対策として光ファイバの射出側もしくはOSAの入射口に幅20μm程度のスリットを追加すること、及び光ファイバに大口径のものを用いることで問題を解決できることが分かり、今年度中に対策に着手した。しかしながら、この影響により長期間にわたる高分解能FTIRとの同時比較観測の開始が、当初計画よりも約4カ月遅れている。以上から、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
OSAの実地での性能評価に不可欠な高分解能FTIRとの同時比較観測に関しては、波長分解能及び入射光量の改善のための追加対策にすでに着手しており、実験室で性能評価が終わり次第、北海道母子里観測所に設置された高分解能FTIRとの同時比較観測を開始する。また、冬季においては雪などの気象条件の影響で観測効率が下がるため、この時期には気象条件の良い遠隔地に移設して試験観測を行い、年度内に当初の目標であるOSAの実観測における性能評価を完成する予定である。その他の部分については、研究は順調に進展していることから当初の計画に沿って進め、CO2及びメタン(CH4)カラム濃度解析の高精度化を実現する。
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