2012 Fiscal Year Annual Research Report
2010年夏のロシアブロッキングの成因,予測可能性と日本の猛暑への影響の解明
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23340141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
向川 均 京都大学, 防災研究所, 教授 (20261349)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ブロッキング / 予測可能性 / アンサンブル予報 / 大気循環 / 異常気象 / 猛暑 / 夏季 |
Research Abstract |
本年度は、最も高度場偏差の大きかったロシアブロッキング(2010年7月下旬~2010年8月中旬)に着目し、その持続メカニズムと予測可能性を明らかにするために、JRA-25/JCDAS再解析データ、気象庁現業1か月アンサンブル予報データ、及び、気象研究所/気象庁統一大気大循環モデルによるハインドキャスト予報実験データを用いて詳細に解析し、次の結果を得た。 (1)7月末のロシアブロッキング持続期の予測精度が、その前後の時期と比べ特に悪化することが分かった。このような持続期における予測精度の顕著な悪化は、ブロッキングの予測可能性に関する先行研究では示されていない。従って、2010年夏季のロシアブロッキングの予測可能性変動は特異であったことが分かる。 (2)7月末のロシアブロッキングの発達には、その上流域において降水に伴う非断熱加熱により強化された対流圏上層での水平発散が重要な役割を果たしていたことが示唆された。 (3)8月上旬にロシアブロッキングは再発達したが、この時期のロシアブロッキングの維持・強化には、夏季の気候場のユーラシア大陸西部(ギリシャ付近)における対流圏上層の強い収束域に、ブロッキングに伴う負の相対渦度偏差が存在したことにより生じた、渦管の伸張に伴う負の渦度強制が最も重要であることが示された。このブロッキング維持メカニズムは、2010年夏季のロシアブロッキングに特有なものであることも、他のブロッキング事例との比較から明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2010年夏季にロシアで生じた長寿命ブロッキングの特異な維持機構について解明することができた。また、北大西洋海面水温分布(SST)を平年値で与えて予報実験を実施できるように、気象研究所大気大循環モデル(AGCM)を改変することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
北大西洋海面水温偏差がロシアブロッキングの形成維持に果たす役割の解明を明らかにするため、北大西洋海面水温分布を平年値で与えてアンサンブル予報実験を実施し、その結果を詳細に解析する。
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Research Products
(23 results)