2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射線帯マルチスケールシミュレーションによる相対論的電子の輸送加速過程の研究
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23340146
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三好 由純 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 准教授 (10377781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 慎司 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60528165)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射線帯 / 粒子輸送 / 粒子加速 / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では、放射線帯外帯全体のマクロなダイナミクスとプラズマ波動との共鳴相互作用によるミクロな素過程を同時に解き進めるマルチスケールシミュレーションを新たに開発し、輸送・加速の非線形過程が外帯電子のグローバルな分布にどのような影響があるかを明らかにすることを目的とする。 本年度の主な成果は以下である。(1) グローバルMHDシミュレーションの中でテスト粒子を解き進める計算を実行し、太陽風の動圧パルスの到来にともなって磁気圏を伝搬するMHD波動と、高エネルギー電子のドリフト共鳴によって、一部の電子が選択的に加速される様子を明らかにした。また、(2) Van Allen Probes衛星のプラズマ波動観測および電子観測データを考慮したホイッスラーモード波動と電子との共鳴相互作用に関する計算を行い、脈動オーロラに伴ってEISCATで観測された広いエネルギー帯の電子降り込みの様相を再現することに成功した。さらに、(3) シミュレーションとの比較を目的として放射線帯外帯変動の統計的描像の抽出を行った結果、惑星間空間磁場によってホイッスラーモード波動、および放射線帯電子増加が制御されている様子が明らかになった。 これらの一連の結果は、国際会議での招待講演をはじめとして各種の学会でとして報告されるとともに、論文誌として報告した。また、これらの成果については、新聞等でもとりあげられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、開発されたシミュレーションコードを用いて、実際の太陽風や磁気圏の人工衛星観測を入力とした計算を行い、各種の観測結果と比べる実証的な研究を進めてきている。平成25年度には、(1)グローバルMHDとテスト粒子との連成計算、および(2)波動粒子相互作用素過程の研究を行い、それぞれ以下の成果を得た。 (1) 太陽風動圧の急増時の磁気圏の変化をグローバルMHD計算によって再現し、高エネルギー粒子軌道追跡との連成計算を行った。その結果、昼側から夜側に伝搬するMHD波動と同程度のドリフト速度を持つ高エネルギー電子とがドリフト共鳴を起こし、10分程度で数百keV以上の加速が起こりうることが明らかになった。このような効果的な加速は、共鳴条件を満たす一部の電子に選択的に起こりうるものであり、この選択的な加速の結果、電子の経度方向の構造がフィラメント化する様相も確認された。 (2) Van Allen Probes衛星のプラズマ波動観測データおよび電子観測データを入力した計算を行い、コーラス波動が磁力線方向に伝搬することによって広いエネルギー帯の電子と共鳴すること、この結果、脈動オーロラ発生時には、同時に放射線帯電子の地球大気への降り込みも発生している可能性を予見した。この予見を確認するために、EISCAT観測による電離圏電子密度測定を行ったところ、脈動オーロラ発生時には数百keVの電子が同時に降り込んでいることが確認され、コーラス波動が広いエネルギー帯の電子を同時に磁気圏から消失させていることが実証された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきたシミュレーションによって、MHD波動およびホイッスラーモード波動との非線形相互作用による輸送・加速・散乱の素過程の計算を行ってきており、磁気圏の過渡的な変化の際の急激な輸送や加速、また広いエネルギー帯の電子の同時消失過程などの現象が明らかになってきている。 今後、シミュレーションによって指摘された結果を、さらに定量的に検討していくために、パラメータサーベイにもとづく現象の性質の把握、および観測データとの比較にもとづく実証研究の両面からのアプローチを行う。 (1) 太陽風動圧急増時の放射線帯電子の選択的加速については、太陽風側の条件を様々に変化させ、その結果磁気圏にどのようなMHD波動が励起、伝搬するか、またどのエネルギー帯の電子が選択的に加速されるかを調べていく。太陽風の変化と、その結果起こる電子加速との対応関係を整理することで、今後の観測データの解釈の指標を確立する。 (2) コーラス波動による広いエネルギー範囲にわたる電子の散乱過程については、EISCATによる電離圏電子密度のデータを用い、数十keVから数MeVにわたる電子が同時に散乱されている事例を調べていく。また、そのような広いエネルギー帯域にわたる降り込みが磁力線方向を伝搬するコーラス波動による散乱で統一的に説明されるかどうかを、シミュレーションとの比較によって検討していく。
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[Journal Article] Variations of nitric oxide in the mesosphere and lower thermosphere over Antarctica associated with a magnetic storm in April 20122014
Author(s)
Isono, Y., A. Mizuno, T. Nagahama, Y. Miyoshi, T. Nakamura, R. Kataoka, M. Tsutsumi, M. Ejiri, H. Fujiwara, and H. Maezawa
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Journal Title
Geophys. Res. Lett.
Volume: 41
Pages: 1
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Significance of Wave-Particle Interaction Analyzer for direct measurements of nonlinear wave-particle interactions2013
Author(s)
Katoh, Y., M. Kitahara, H. Kojima, Y. Omura, S. Kasahara, M. Hirahara, Y. Miyoshi, K. Seki, K. Asamura, T. Takashima, and T. Ono
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Journal Title
Ann. Geophys
Volume: 31
Pages: 503, 512
DOI
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