2012 Fiscal Year Annual Research Report
3次元全粒子シミュレーションによる月面磁気異常と太陽風の運動論的相互作用の研究
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23340148
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
臼井 英之 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10243081)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 月面磁気異常 / 粒子シミュレーション / 太陽風 |
Research Abstract |
かぐや衛星により月面近傍での太陽風イオン反射や粒子加熱が頻繁に観測され、月面磁気異常と太陽風の相互作用が強く示唆されている。磁気異常のスケールは太陽風イオン慣性長と同等またはそれ以下であり、この相互作用の本質的理解にはMHD近似ではなく太陽風プラズマの粒子効果を含めた解析が必須である。そこで本研究では、特にイオンスケールから電子スケールを含む高度100kmまでの領域に着目し、そこでの小型磁気圏形成とそれに関連した境界層電流形成、衝撃波や磁気リコネクション現象、その他プラズマ不安定性について3次元全粒子シミュレーション解析を実行し、波動粒子相互作用に基づく月面磁気異常領域のプラズマ環境を解明する。 平成24年度では月面での異常磁場の代表的な領域の一つとして知られているライナーガンマ領域を例にとり、ダイポール場と太陽風の相互作用に関する基礎的な2次元粒子シミュレーションを行い、磁気異常上空におけるプラズマ空間分布および電界形成の基礎解析を行った。小規模磁場領域ではイオンは非磁化的な振る舞いをするよ予想されていたが、電子は磁場に捕捉されるため、イオンと電子の挙動の違いによる電荷分離電界が局所的に発生し、それによってイオンも間接的に小型磁場の影響を受けることを明らかにした。この新しい知見の詳細解析を進めるため、3次元モデリングおよびそれを用いた3次元シミュレーション実行は平成25年度の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究において2次元シミュレーションで新しい知見が得られたため、計画していた3次元モデリング及びそのシミュレーション実行は25年度に行うことにした。24年度の研究成果は、複数の国際会議で招待講演を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、昨年度行ったシミュレーション解析を引き続き行うとともに、3次元空間モデリングを検討し、それを用いた粒子シミュレーションを開始する。小型磁気圏形成の検証については、電子の粒子的な振る舞いを考慮して、L<Siの条件(内部磁場の磁気圧と太陽風動圧の平衡点と磁気ダイポール中心までの距離をL、太陽風イオン慣性長スケールをSi)でシミュレーションを行い、月面に到達する太陽風プラズマ粒子の分布や異常磁場上空でのプラズマ反射について定量的に解明する。特にライナーガンマでは、太陽風は異常磁場に対して斜めに入射する場合が統計的に多いという事実をシミュレーションモデリングに反映し、それによる太陽風プラズマの影響や磁場構造の変化、月面に到達できる粒子の空間分布等を重点的に調べる。また、小規模磁場構造とIMFの間で発生する可能性のある磁気リコネクション現象についてIMF方向と人工ダイポール磁場軸の角度依存を理解する。 一方、磁気圏形成に伴う電磁擾乱、粒子加速・加熱についても着目し波動粒子相互作用の観点で詳細解析を行う。電子とイオンのダイナミクスの違いから発生する電場形成メカニズムや電磁場擾乱領域での波動現象の有無を明らかにするとともに、プラズマ不安定性を誘発するビーム成分や温度異方性を調べ、どの種のプラズマ不安定性が関与しているか同定する。結果として得られる粒子加熱や加減速の定量的解釈を行い、前年度同様、引き続 き連携研究者の東京工業大学の西野氏と共に、かぐや衛星で観測された現象との関連について議論し理解を深める。
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Research Products
(7 results)