2012 Fiscal Year Annual Research Report
「深層地下水変動観測システム」で宮城県沖大地震の前兆を捉える研究
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23340150
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大槻 憲四郎 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (70004497)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 深層地下水変動 / 地震の前兆 / 水位 / ラドン / 炭酸ガス / 水温 / 3.11巨大地震 / 4.11いわき地震 |
Research Abstract |
① 2011年4月11日に発生したいわき地震(M7)の余震域に2本の深層孔井を借用して4月21日から50日間の臨時観測を実施した結果を解析し、論文として公表した(2012,地質学雑誌,v.118, no.11, 696-708)。この観測は、余震に伴う水位変動を震源の間近で観測することにより、前兆的変動が捕捉できることを期待して行ったもので、水位換算体積歪の分解能は2.5~3×10の-10乗strain/mmと敏感で、27個の地震に伴う水位変動を観測できた。発震機構解が求められている21個に関しては、水位変化がdislocationモデルによる体積歪の理論値に比例するので、水位変化の主因は静的体積歪変化であることが明瞭となった。約30%の地震に地震直前の微弱な水位変動が伴われていたが、前兆変動と断言できるには更なる研究が必要である。 ② いわき地震の余震活動が次第に衰退する一方、隣接する茨城県北部での余震活動が継続していたので、高萩市に深層自憤井を借用し、ラドン濃度、炭酸ガス濃度、水温の観測を2012年度当初から開始した。また、3.11巨大地震以降茨城県~千葉県沖での大地震が危惧されていたので、筑波大学構内にある既設の深層孔井で2012年6月から地下水位の観測を開始した。これらの新しいサイトでの観測は現在も継続している。 ③ 本研究計画開始時の「深層地下水観測システム」は現在では一関市やびつ温泉、登米市南方、東松島市矢本の3サイトであり、2012度も観測を継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3.11巨大地震の発生を受けて本研究の当初計画を修正し、3.11に誘発されて起こる地震、特に内陸浅発地震にフォーカスして観測することにした。4.11のいわき地震の余震に伴う水位変動観測は大変成功的であったので、茨城県高萩市でのラドン濃度、炭酸ガス濃度、および水温観測、筑波大学構内での水位観測を新たに開始した。既存の「深層地下水変動観測システム」も継続稼働している。したがって、計画はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 今後数年間は3.11の余震と誘発地震が発生し易いと考えられるので、既設の「深層地下水変動観測システム」、および昨年度に新設した高萩市と筑波大学構内の観測サイトでの観測を継続する。しかし、これまでの観測から、海溝型大地震に伴う数日から数時間前の前兆を捉えられる可能性は低いものと判断され、より長期の変化にも注目してデータを解析すべきである。 2. 他方、いわき地震(M7)の余震に伴う地下水位変動の臨時観測の戦略は、規模は小さいが短期間の中に多数発生する余震を震源の間近で観測することは、地震に伴う地下水変動のメカニズムの解明に役立ち、前兆的変動も捕捉できるかもしれないというものであった。それは、かなり成功的であった。この経験から導き出される観測戦略は、マグニチュード7程度の内陸浅発地震のマグニチュード6前後の最大級余震を震源距離10km前後で観測すべきであるというものであり、これによって直前の前兆を捉えられる可能性がある。そのために本震発生後2,3日以内に観測を開始できる準備を整えておく。 3. これまでの観測種目は地下水位、水温、ラドン濃度、炭酸ガス濃度である。観測を長期間継続してきた結果、水位変動が最も有効であり、観測も容易であることが分って来た。その他の観測種目の有効性と限界とを明確にして本研究計画を終了することが重要である。 4.3.11を踏まえたその後の研究結果は、断層面の不均質性こそが地震の複雑さの原因であり、それを事前に知ることが大変難しいことが予知の困難さの原因であることを改めて確認した。幸い、私の研究によれば、断層帯の幾何学的不均質性には確かな規則性があることが明らかにされつつある。摩擦物性の不均質分布も重要であり、その実験的・理論的研究も多くの研究者によって進展している。本研究計画の一部として、断層帯幾何学の不均質性と摩擦すべり実験による研究を含める。
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Research Products
(3 results)