2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒマラヤ山脈の上昇・削剥・冷却史とモンスーン変動史の研究
Project/Area Number |
23340156
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 治孝 京都大学, 理学研究科, 教授 (90183045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平島 崇男 京都大学, 理学研究科, 教授 (90181156)
平田 岳史 京都大学, 理学研究科, 教授 (10251612)
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Keywords | ヒマラヤ山脈 / 変成岩ナップ / 大陸衝突型造山帯 / 熱年代学 / 高温延性剪断帯 / モンスーン / 古気候 / 古環境 |
Research Abstract |
(1)変成岩ナップの研究:東ネパールのDhankuta地域を中心にナップの先端部において,MCTとその下位の高温延性剪断帯MCTzoneの地質調査と岩石試料採取を行った。MCTの上盤と下盤,および下盤を成すKuncha層に貫入した花崗岩類から試料を精選し,ジルコンを抽出しレーザーICPMassを使ってU-Pb年代を測定した。その結果,以下の4つの新しい事実を発見した。(1)上盤の高度片麻岩類は20~17Maに熱イベントを破り,明瞭な鉛ロスを生じている。(2)下盤の珪岩や片岩には鉛ロスは認められず,19~17億年の年代ピークを持つ。また全ての試料は16億年より若い年代を示さない。すなわち16億以降は全く熱のイベントを被っていない。(3)Kuncha層に貫入した花崗岩類は,18~19億年の結晶化年代を示す。また変成・変形した眼球片麻岩類は,25~17Maに熱履歴を被っている。(4)変成岩ナップに覆われた中新世の蛇行河川堆積物Dumri層中の砕屑性ジルコンには,若い熱履歴は認められないが,FT年代は11~10Maと若く,300℃程度の熱の影響を受けている事が明らかとなった。これらの事実は,MCTを境に供給源を異にしたジルコン粒子を含む岩石が接しており,これまで問題になっていたMCTの位置をジルコンのU-Pb年代を基に決定できることを示している。またDumri層中のジルコンにはKuncha層と同じ年代・熱履歴を持つ粒子は含まれておらず,同層堆積中には,Kuncha層は地表に露出していなかった可能性が高い。 (2)シワリーク層群の研究:西ネパールのタンセン-ブトワール地域で,シワリーク層群の調査を行い,重鉱物分析用の試料を組織的に採集した。特に砂岩の性質が変化する10Ma前後を中心に約50試料を採取することができた。また本調査によって,10Ma頃に侵食され礫岩層が形成されている事が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
変成岩ナップの研究については,ジルコンのU-Pb年代による高温熱履歴の研究が非常に有効である事が判明した。得られた4つの新事実は国際的な視点から見ても意義があり,現在Island Arc誌特集号に論文投稿準備中である。また同じジルコン粒子について低い閉鎖温度を持つFT年代を測定する事で,300℃程度の低温での熱履歴を検出できる事を明らかにすることができた。このように複数の年代測定を同じ試料に適用するによって,幅広い温度と年代範囲の履歴を明らかにする有効性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも変成岩ナップについては,東ネパールを中心に地質調査を実施し,ナップの運動方向や歪みについてのデータを採取する。また異なった層序・構造単位から組織的に試料を採取し,ジルコンを抽出し,レーザーICPMassを使用してU-Pb年代と熱履歴を明らかにする。前縁盆地堆積物については,得られた試料の薄片を作成し,岩石学的特徴を記載し,年代進行に伴う砂岩組成の変化を明らかにする。また重鉱物の分離作業を行い,重鉱物の組成分析に着手する。二つの研究成果を併せて,変成岩ナップの前進に伴う供給地の変化と堆積盆地での環境変化を明らかにして行く。
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Research Products
(5 results)