2011 Fiscal Year Annual Research Report
重元素安定同位体の高精度分析による原始太陽系星雲の物質不均質分布の解明
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23340171
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 哲也 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00467028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 岳史 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10251612)
中本 泰史 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60261757)
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Keywords | 高精度同位体測定 / 原始太陽系星雲 / 隕石 / 重元素安定同位体異常 / TIMS / ICP-MS / ダスト粒子 / 輸送モデリング |
Research Abstract |
本課題は原始太陽系星雲の化学的不均質、特に惑星形成時における重元素安定同位体の不均質分布に焦点を当て、その不均質の程度や生み出した原因の解明を目的としている。最新の質量分析技術を駆使して始原的隕石の重元素同位体組成を超高精度で測定し、その結果を原始惑星系円盤内におけるダスト粒子の輸送・成長に関する物理モデリングと融合するという新しい試みである。初年度における本課題の研究計画は、(1)対象となる隕石の選択と入手、(2)隕石の適切な分解法の確立、(3)TIMS・ICP-MSによるSr・Nd・Os・Ru同位体分析法の開発、および(4)同位体データと円盤内ダスト粒子の進化過程を結びつけるためのモデル構築、であった。まず(1)については太陽系初期の情報を色濃く残す始原的隕石を中心に試料選択を行った。研究代表者が元々所持していた試料に加え、販売業者からの購入や他研究機関からの譲渡などにより、コンドライトは炭素質・エンスタタイト・普通・Rをそれぞれ17種・5種・59種・2種、エイコンドライトを14種、更に石鉄・鉄隕石13種を揃えた。これにより初期太陽系の幅広い時空間をカバーする試料群を得た。次に(2)について、液相レーザーアブレーション法(LAL法)による試料分解法の開発を行なった。これは固体試料にフェムト秒レーザーを照射して試料をナノ粒子サイズに分解する新手法である。普通隕石の金属相および鉄隕石に本手法を適用し、Fe同位体測定を行なった。その結果、風化生成物の影響を最小限に抑え、正確な安定同位体情報を引き出すことができた。アルカリ融解法の開発も同時に行なう予定であったが、実用化には至っていない。(3)に関しては対象元素を変更し、N-TIMSによるMoおよびTe同位体測定法の開発を集中的に行なった。標準物質の繰り返し再現性は、他グループによる最新のMC-ICP-MSによる分析と同程度であった。コンドライト隕石全岩試料およびその酸リーチング液の分析を行ない、Moには元素合成起源の同位体異常が存在し、Teには存在しないことを発見した。(4)では,小惑星(隕石母天体)が形成される際に生成し得る主要元素の不均一性について,惑星集積理論に基づいた検討を行った。その結果,小惑星は百分の一程度の不均一性を内包する可能性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つの研究計画はいずれもほぼ予定通り進行している。計画(1)二必要試料の9割以上は既に確保した。計画(2):アルカリ融解法の確立が若干遅れているものの、LAL法の開発は順調である。計画(3):分析元素の変更はあったが、MoとTe同位体分析の開発に集中した。隕石試料の測定まで至ったことは予想以上の進展である。計画(4):微惑星段階以降の不均質性については検討が進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究計画に沿って発展させていく。岩石の分解法開発については、若干遅れているアルカリ融解法の開発に力を入れる。アンモニウム塩融剤を用いて、微量元素汚染を極力防ぐ手法を開発する。同時に、高温高圧分解法による隕石の完全融解の可能性も追求する。従来の高温高圧分解ではフッ化水素酸と硝酸の混酸が一般的に用いられてきたが、ここに硫酸を加えることで、難溶性のプレソーラー炭化ケイ素などを分解できる可能性がある。一方、液相レーザーアブレーション法(LAL法)ではこれまでの金属相に加え、ケイ酸塩相への適用も目指して開発を続行する。既に実施している隕石試料のMo・Te同位体分析は測定数を増やすだけでなく、測定精度の更なる向上も試みる。同時に隕石全岩試料について、Sr・Nd・Ru同位体の分析を開始する。また、物理モデリングに関しては円盤内ダスト粒子の移動について,検討を始める。
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] The molybdenum isotopic composition of the modern ocean2012
Author(s)
Nakagawa, Y., Takano, S., Firdaus, M.L., Norisuye, K., Hirata, T., Vance, D., Sohrin, Y.
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Journal Title
Geochemical Journal
Volume: (印刷中)
Peer Reviewed
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[Journal Article] Evaluation of Laser Ablation in Liquid (LAL) technique as a new sampling technique for elemental and isotopic analysis using ICP-mass spectrometry2011
Author(s)
Okabayashi, S., Yokoyama, T.D., Kon, Y., Yamamoto, S., Yokoyama, T., and Hirata, T
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Journal Title
J. Anal. Atom. Spectrom
Volume: v.26
Pages: 1393-1400
DOI
Peer Reviewed
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