2012 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマバイオプロセスのためのプラズマ液中反応場の構築と理解
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23340176
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北野 勝久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20379118)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマ / 液中プラズマプロセス / フリーラジカル / 生体高分子 / プラズマ医療 / プラズマ殺菌 / プラズマ処理水 |
Research Abstract |
大気圧低温プラズマによる液中反応場を用いたバイオプロセスの研究の基礎過程を研究するために、プラズマ処理水と液中ラジカルの細胞膜浸透に重点を置いて研究を進めた。 プラズマ処理水とは、文字通りプラズマで処理した液体のことであり、類似する研究報告もあるが、それらはプラズマにより生成した過酸化水素や亜硝酸の効果を利用した物であり、プラズマを使う価値が低い物であった。それに対して、低pH法と呼ばれる効果的液体殺菌手法に適用可能なプラズマ処理水の研究を行ったが、室温では数分程度で失活することから過去の研究とは全く異なる化学反応系を利用している。殺菌力ならびに液中活性種の半減時間が液体の温度に依存することが新しく明らかになった。その半減時間はアレニウスの式にあてはまっており、液体の温度を下げれば下げるほど半減時間を伸張させることが出来、冷凍保存することで数ヶ月以上にわたり殺菌活性を保持できることがわかった。 低pH法による液体殺菌では液中のスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-・)が重要であり、pHを下げることで酸解離平衡により電気的に中性なヒドロペルオキシラジカルに変化すること細胞膜の透過性が劇的に増して高い殺菌力が得られることがわかっている。このことを実証するために、細胞膜を模擬したミセルを作成し、ミセルに内包した色素の脱色反応を見ることで活性種の膜透過性を評価したところ、pHに依存して脱色が進むことが判明した。液中の不均化反応を考慮してヒドロペルオキシラジカルの濃度のpH依存を評価したところ、このミセルの脱色反応と各種細菌に対する殺菌力のpH依存が見事に一致していたことから、液中活性種の膜透過性が重要であるという知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
連携研究者の強いサポートが得られたこともあり、予定外の新しい成果が得られ、学術的な成果のみならず、実用的な新技術を複数開発することにも成功した。メールや電話に加えてミーティングを行うことで密に連絡を取っていることもあり、予定以上の知見が得られており、次年度以降にさらなる新しい研究展開が可能であることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の主張するプラズマ処理水の殺菌力は室温では数分程度で失活するが、同時に物理化学的な計測でもスーパーオキシドアニオンラジカルが同じように減衰することが実験的にわかっている。しかしながら、スーパーオキシドアニオンラジカルそのものの半減時間とは大幅に異なっていることから、より複雑な化学反応が関与していることが推察される。このため一連の化学反応を明らかにする必要がある。 本研究課題は、「プラズマバイオプロセスのためのプラズマ液中反応場の構築と理解」であり、反応基素過程を検証するのが目的であるが、研究代表者は、消毒や止血などのプラズマ医療に関する研究を専門の医師と共にin vitroのみならずin vivoで並行して進めており、それらの研究と相互に知見を交換することで、より適切な基礎研究を進められるものだと考えている。特に、気相中ではなく液体中でプラズマと生体高分子の反応を行い、液中で評価を行う研究は世界的にみてもほとんど行われていないが、プラズマの生体への適用を考えた場合重要な研究であり、今後も液体中での評価を主に研究を進めて行く予定である。
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