2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河内 宣之 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50161873)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 励起分子素過程 / 量子もつれ |
Research Abstract |
水素分子の解離により量子もつれH(2p)原子ペアが生成し、そのダイナミクスは単独のH(2p)原子のそれとは異なると予想される。そのことを実証するために、H(2p)原子ペアが放出するLyman-α光子ペアの角度相関関数と角度―時間相関関数を測定することを目的とした。それらは、量子もつれ原子ペア状態が転写されたものだからである。 ガスセルに水素ガスを満たし、そこに直線偏光した放射光を導入する。入射光軸に直交する面内に二つの光子検出器を置く。各々の光子検出器は、MgF2窓とmicrochannel plateにより構成する。これにより波長115-200nmの光子が検出される。Lyman-α光の波長は121.6 nmであり、本実験で使用するエネルギー30 eV以上の光子をH2が吸収することによる発光のうち、この波長範囲にあるのは、Lyman-α光のみである。 入射光子エネルギー33.66 eVにおいて、Lyman-α光子の角度相関関数をこれまでよりも格段に高い精度で測定した。直線偏光した入射光の偏光ベクトルと光子検出器c, dの軸がなす角をΘc, Θdとすると、a)Θd=Θc+π、b)Θd=-Θc、c)Θd=-Θc+πの三つの配置について角度相関関数を測定した。配置b)とc)における角度相関関数を測定したのは、これが初めてである。理論計算の結果と比較することにより、もつれ原子ペア状態の実体をかなり絞ることができた。またLyman-α光子ペアの角度―時間相関関数も、統計はまだ十分ではないものの測定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における大きな課題が、超高真空チェンバー内で二つの光子検出器を独立に回転させる装置を開発することであった。初年度(23年度)にその装置の開発をおえ、24年度当初からそのテストを行った。さいわいにも検出器を回転させてもガスセル内の圧力は安定しており、またアライメントの工夫と参照測定の採用により、期待を上回る高い精度と再現性で、角度相関関数を測定できるようになった。その結果、もつれ原子ペア状態の解明に向けて大きく前進した。また角度-時間相関関数測定にもめどが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、入射光の偏光度を高精度で測定したうえで、Lyman-α光子ペアの角度相関関数と角度―時間相関関数を測定することが肝要である。このことにより理論との比較をより詳細に行えるようにする。その上で、圧力効果を検討する。これはH(2p)原子ペアのもつれが水素分子との反応により、変質する可能性があるためである。また非断熱遷移の寄与を考察するためには、解離速度を変える必要がある。そこで同位体効果と入射光子エネルギーの効果を検討する。
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Research Products
(2 results)