2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350004
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 道雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (80260032)
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Keywords | 量子エレクトロニクス / 単一分子分光 / 核スピン / 低温 / 量子状態 |
Research Abstract |
波長956nmの波長安定化半導体レーザーをベースとした光源システムを構築し、これを用いてPr^<3+>の光検出が行得ることを確認、さらに核スピンによる超微細構造をラジオ波とレーザーの二重共鳴分光で測定し、試料に対するラジオ波照射を確認した。 現有のTiSaレーザーの線幅は1GHz程度あり、安定な外部共振器を参照として誤差信号を取り出し、電気回路で負帰還をかけても数MHzに抑えこむのが限界であった。これに対し、モノリシック構造により周波数の安定化が図られた半導体レーザーは、はじめから10MHz程度の線幅しかなく、負帰還をかけると容易に100kHz以下になり、単一Pr^<3+>の観測に必要な条件を満たした。 また、ゼロ磁場で単一Pr^<3+>の発光を検出するには、ゼロ磁場における核スピン状態間の二本の遷移、すなわち8MHzと16MHzの核四極子共鳴遷移をラジオ波で飽和させて、核スピンが絶えず全ての可能な量子状態を経験するようにしなければならない。そのために必要な、二周波数に同時に共鳴するラジオ波回路も開発し、液体ヘリウム用クライオスタットの底部にある試料と対物レンズホルダーに実装した。すなわち、ラジオ波は50Ωの同軸ケーブルによって液体ヘリウム中の試料に届けられ、試料周りのコイルとともに二重共振回路の素子として組み込まれた二つの可変容量をクライオスタットの外部から変化させることで二つの共鳴周波数を調整できる。実際に試料にラジオ波が当たっていることを、ラジオ波とレーザー光の二重共鳴分光で確認した。光とラジオ波の両方に関して、単一スピン観測のための装置として問題ないものに仕上がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の後半に受けた追加交付であったが、開発を目指している非球面対物レンズのプロトタイプの設計は既に終えており、ほぼ計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
固体中の一個の核スピンによる超微細構造を光遷移のエネルギーで区別しようとするもので、10^7の高い分解能が必須である。また、毎秒10,000光子程度の発光は、現実的な検出される光子数としてはその1%程度の毎秒100光子程度なので、これを検出できる高い信号対背景光比が要求される。これらの条件を満たすべく、光源の性能など装置の能力向上を追求してきた。その延長として非球面対物レンズの開発が残された課題であるが、今後は試料の微結晶化など、試料にも工夫が必要である。
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