2012 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体界面の電気二重層形成機構の解明と機能化への指針
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23350005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大内 幸雄 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60194081)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオン液体 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
イオン液体は1992年[EMIM]BF4の合成以来、特異な熱力学物性と電気化学特性により高い感心を集め、幅広い分野で研究が続けられている。特に、イオン液体の液体/液体界面や、電極界面における界面電気二重層の構造と制御が喫緊の課題として重視されている。本研究は、古典的な希薄電解質溶液で定義される界面電気二重層が、無溶媒電解質液体であるイオン液体に暗黙の内に適用される誤った現状に鑑み、これを物理化学の基礎的問題として再構築し、当該分野の誤謬の解決を図る。我々は非線形振動分光・光電子分光・理論計算の3手法を有機的に組み合わせ、電極上のStern層の構造評価、イオン液体/電極間の電子準位接続の解明など、種々の未解明問題の解決にあたる。本研究は、物理化学・電気化学・物質科学に跨る化学の基礎的課題であり、産業に直接波及する重要課題である。これまでに我々はモデル化合物として超高純度のイミダゾリウム系イオン液体[Cnmim]X (X=OTf, TFSA, PF6)を調整し、Pt, Au基板上におけるアニオンならびにカチオンの吸着・脱着の電位依存性を、それぞれの電気化学窓内において赤外-可視和周波発生振動分光法(IV-SFG法)を用いて計測することに成功した。驚くべきことに、サイクリックボルタングラム(CV)に対応するイオン液体の吸着・脱着の電位依存性には熱平衡状態にありながら電位ヒステリシスを伴い、その幅は1V程度にも達すること、またヒステリシスの形状が基板金属によっても異なることが分かった。これは、古典的な希薄電解質溶液で定義された界面電気二重層には説明し得ない現象であり、イオン液体の構造的特異性が明確に反映されるものと期待され、イオン液体の電子状態との比較検討が極めて急がれる。現在、アニオン・カチオンの吸脱着に関して現象論的に考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の中で重要な役割を担う博士課程学生の死去に伴い、予算の繰り越しなどを伴う計画の大幅な変更を余技なくされたが、研究成果に関しては特に赤外-可視和周波発生振動分光法(IV-SFG法)に成果が出始めており、概ね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体の特異な界面モルフォロジーとイオン液体/金属電極界面に見出したアニオン・カチオン吸脱着の電位ヒステリシス効果は、それらの電子構造との相関を検討すべき現象であると考えられる。今後は多少遅れが認められた光電子分光法による価電子帯の評価に注力し、イオン液体の界面電気二重層の特異性を明らかにしたい。 具体的な手法は以下の通り、 1)溶液ジェット法に代わるイオン液体薄膜作成法として、イオン液体の希薄メタノール溶液によるパルスバルブ法で薄膜堆積を試みる。イオン液体の多くはメタノールに完全可溶であるため、溶液ジェット法を用いなくても目的とする薄膜が作成できる可能性が高い。 2)Au, Ptなどの金属基板に単結晶を用い、電子状態に関する理論計算との対比を明確化する。 3)電位ヒステリシス効果を検証するためイオン液体を各種溶媒に溶解し、IV-SFG法による吸脱着過程を考察する。希薄溶液においてヒステリシスが観測されるか否かは、旧来の電気化学的理解に大きく影響すると思われる。
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