2012 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体の構造・揺らぎの不均一性がもたらす超高速化学反応の特異性の解明
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23350006
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
木村 佳文 同志社大学, 理工学部, 教授 (60221925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 啓文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70290905)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオン液体 / 励起波長依存性 / プロトン移動反応 / 構造不均一性 / 超高速蛍光分光 / RISM-SCF |
Research Abstract |
今年度においてはジエチルヒドロキシフラボン(DEAHF)の電子励起状態における分子内プロトン移動反応の励起波長依存性のダイナミクスを、昨年度購入したOPAシステムを組み込んだ超高速時間分解蛍光測定システムにより測定をおこなった。イオン液体としてはイミダゾリウム系のイオン液体において側鎖のアルキル鎖長の長さをエチルからオクチルまで変化させた系列と、ホスホニウム系のイオン液体においてアルキル鎖の長さの異なるものを選択し、アニオンとしては疎水性のイオン液体として最も一般的なビストリフルオロメタンスルホニルアミドを用いた。励起波長としては370nmから430nmまで変化させ、プロトン移動を起こす前のノーマル体とプロトン移動後のトートマー体の蛍光スペクトルの初期ダイナミクスの評価を行った。その結果、蛍光ダイナミクスの初期過程において顕著な励起波長依存性が観測され、定常蛍光で観測された反応収率の励起波長依存性が、反応の初期ダイナミクスの効果によるものであることが明らかとなった。またイオン液体の溶媒和能力を一般的に記述する方法論の開拓や、イオン液体の溶媒和構造、さらにイオン液体にポリマーなどを混合することで不均一場を構成し、反応ダイナミクスに及ぼす効果も合わせて検討を行った。本年度装置の移設の関係で繰り越しをおこない、年度が変わってから実験装置を研究代表者のあらたな所属機関に移設し、効率的な実験が行えるように環境を整えた。実験装置の移設後、システムの立ち上げを行った。 理論については分子性液体の統計力学理論と量子化学計算を組み合わせたRISM-SCF-SEDD法をベースに、緩和過程を実効的に取り入れられる新しい手法を開発し、上記実験系(但しエチル基をメチル基に置換)へ適用した。この結果、励起直後に比してイオン液体の緩和が進むとプロトン移動反応の障壁が高くなる傾向にあることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
化学反応の励起波長依存性に関しては、種々のイオン液体中での測定を、典型的な3種類の異なる励起波長で測定を行うことに成功し、その結果初期ダイナミクスに顕著な違いを見出した。これは本研究が目指していた最も主要な部分での成果が得られたことに相当し、当該年度の目標は十分に達成できたものと考えられる。理論計算においては、新しい計算手法により、反応座標と溶媒和座標のカップリングの状態を明らかにすることができたという意味で、本研究の根幹にかかわる重要な進展が行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究においては研究協力者との連携により十分な成果をあげることができた。ただ、研究代表者の異動にともなう実験装置の移設が当初の予定通り進まず、年度を繰り越しての移設となったものの、繰り越した年度の前半において実験装置の移設は無事完了したので、残った研究期間において溶媒和ダイナミクスの評価などの残された課題をこなしていく予定である。
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Research Products
(10 results)