2011 Fiscal Year Annual Research Report
結晶表面薄膜の精密X線構造解析の開発と機能性結晶薄膜の作製に関する研究
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23350012
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
鳥海 幸四郎 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 教授 (90124221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 准教授 (40204200)
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Keywords | 結晶構造解析 / 薄膜結晶 / 表面界面 / 金属錯体化学 / 放射光 / エピタキシャル液晶 |
Research Abstract |
(1)共焦点顕微鏡を用いて表面の凹凸の大きさと表面膜結晶の厚さを評価したハロゲン架橋一次元白金混合原子価錯体のエピタキシャル結晶を試料として、SPring-8 BL13XUの多軸X線回折計を利用して、ビーム幅約6ミクロンに絞った8keVの集光X線ビームを結晶表面にすれすれに入射して、結晶表面からの回折X線強度を非対称の回折条件で測定した。測定に用いた結晶試料の薄膜単結晶の厚さと基板結晶表面の凹凸は、約0.20μm、0.5μmであった。表面薄膜単結晶からの回折点は若干裾を引いていたが単結晶性であり、基板結晶と方位は一致していた。各反射点の積分強度はバックグラウンドを差し引いて見積もり、膜結晶と基板結晶の積分強度比Ratio=I(film)/I(base)を求めた。膜厚の異なる試料についてI(film)/I(base)の値を比較したところ、膜厚測定の精度を考慮するとほぼ妥当な結果となった。一方、膜結晶と基板結晶の積分強度比の入射角に対する依存性を検証すると、入射角が小さいほど積分強度比は増大することが計算から期待されるが、実測値の傾向は計算値より小さく、回折X線強度を十分な精度で測定できていないことが明らかになった。この原因としては、試料表面の大きさが小さく、表面の凹凸がまだ大きすぎることなどが考えられた。今後、これらの問題点の改善が必要であると考えられる。 (2)ハロゲン架橋一次元白金混合原子価錯体について、臭素架橋錯体の基板結晶表面に塩素架橋錯体の薄膜単結晶をエピタキシャル成長させる方法で薄膜結晶試料の作製を行った。エピタキシャル結晶の作製は、試料溶液と対イオンを含む濃酸を用いた拡散法で行ったが、これまで再現性が乏しかったエピタキシャル化について、再現性の高い方法を確立することが出来た。今後は、有機配位子を変えて同様なエピタキシャル薄膜結晶の作製を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピタキシャル結晶成長を利用した薄膜単結晶の作製に関して、再現性の良い方法を確立するのに手間取った。このため、結晶表面の凹凸の少ない、良質な結晶を用いたX線回折実験が十分に実行できなかった。しかし、現在はこれらの問題はほぼ解決している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を遂行する上で必要な結晶表面の大きさが大きく凹凸が小さい基板結晶を作製し、確立したエピタキシャル結晶作製法を用いて1ミクロン程度の薄膜単結晶を作製して、すれすれ入射の高精度なX線回折実験を行う。積分反射強度を構造因子に変換するルーチンを確立して、表面単結晶の構造解析を行う。また、他のエピタキシャル結晶の作製を進めるとともに、結晶表面を研磨して凹凸の少ない試料の作成法を確立していく。
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