2012 Fiscal Year Annual Research Report
結晶表面薄膜の精密X線構造解析の開発と機能性結晶薄膜の作製に関する研究
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23350012
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
鳥海 幸四郎 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (90124221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40204200)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 結晶構造解析 / 薄膜結晶 / 表面界面 / 金属錯体化学 / 放射光 / エピタキシャル結晶 |
Research Abstract |
(1)結晶表面が広く平坦な(面積約1×1mm2、凹凸0.15μm以下)基板結晶を共焦点顕微鏡を用いて選別し、この単結晶についてすれすれ入射の条件で、結晶を表面に垂直な軸のまわりで180°回転させて反射強度を測定したところ、すべての回転方向で回折X線強度が測定できた。これまでの表面の凹凸が0.5μm以上のエピタキシャル結晶についての測定では、結晶の回転方向によって測定できない反射があったが、今回はラウエ対称で等価な反射についても反射強度に良い一致が見られた。 (2)実測の反射強度を構造因子に変換して単結晶構造解析結果と比較するため、すれすれ入射による結晶表面層の構造解析に対応したLp補正と吸収補正の計算式を導き、実測の反射強度に対して適用して構造因子を求めた。すれすれ入射での反射強度測定で実測した37個の反射強度から構造因子|Fo|2を求め、単結晶構造解析から得られた構造因子|Fc|2の計算値と比較したところ、入射角0.3°および0.5°のデータセットに対して通常のR因子はそれぞれ0.035と0.070と良い結果が得られた。この結果より、結晶表面の凹凸が0.15μm以下の結晶に対しては十分な精度で構造解析できることが明らかになった。 (3)エピタキシャル結晶については表面の平坦性が十分ではない試料(凹凸が0.45μm)について、すれすれ入射での反射強度測定を行った。ほぼすべての結晶の回転方向で回折X線が測定できたが、計算値との一致は十分ではなかった。また、表面薄膜の厚さに関して、共焦点顕微鏡による観察結果と、基板結晶と膜結晶の反射強度比から見積もった厚さに大きな違いが見られた。これらの実験・解析結果を踏まえて、さらに平坦性の良いエピタキシャル結晶を用いて反射強度測定を行い、結晶試料の平坦性と測定精度の関係を明らかにする。これにより、結晶表面層のX線構造解析の実用化を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶表面が広く平坦な基板結晶について、すれすれ入射の条件で回折X線強度を測定できた。この結果、結晶のすべての方位で回折X線強度が測定でき、ラウエ対称で等価な反射についてもほぼ等しい反射強度を測定することに成功した。さらに、実測の反射強度を構造解析に必要な構造因子に変換するための、すれすれ入射の条件でのLp補正、X線吸収補正の計算式を導出した。この計算式を用いて反射強度を構造因子に変換し、結晶構造を用いて計算した構造因子と比較した。この結果、通常の信頼度因子で評価したところ、0.035と十分な精度で測定できたことが明らかになった。 しかし、結晶表面が十分な平坦性をもつエピタキシャル結晶試料を用いて、すれすれ入射での反射強度測定ができなかった。すべての結晶方位で反射強度を測定することに成功したが、十分な測定精度で反射強度測定はできなかった。今後、十分に平坦なエピタキシャル結晶を用いた測定が必要である。 新たな種類のエピタキシャル結晶の作製については、すれすれ入射での反射強度測定・解析及び構造因子へ変換するための計算式の導出に集中していた関係で、十分な成果が得られていない。今後、推進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平坦で広い結晶表面をもつエピタキシャル結晶を作製し、この結晶を用いてすれすれ入射での回折X線強度を測定し、エピタキシャル結晶の表面薄膜単結晶について精度よく単結晶構造解析できることを明らかにし、結晶表面層の単結晶構造解析を実用化する。また、すれすれ入射での回折X線強度の測定法、データ処理方法の高度化、表面が平坦ではない場合の補正などの計算法の導入を行い、高精度な単結晶構造解析法の実現を目指す。 種々のハロゲン架橋一次元錯体の組み合わせについて、エピタキシャル結晶成長法を用いて、薄膜単結晶の作製を試みる。得られた薄膜単結晶について、表面層の単結晶構造解析法を利用して、その結晶構造を決定する。 結晶表面層の単結晶構造解析では、平坦で広い結晶表面をもつ単結晶試料の作製が重要な問題であるが、結晶研磨技術及び試料作成法を用いた試料作製法の確立に務める。 結晶表面を通して小分子が移動するベイポクロミズム現象を示す発光性d10 金属錯体などについて、結晶表面層の単結晶構造解析による研究を実現するための、試料の作成法や測定法を検討し、結晶界面の構造変化とベイポクロミズムとの関係の解明を目指す。
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Research Products
(4 results)