2011 Fiscal Year Annual Research Report
強レーザー場励起・イオン化分子における多チャンネルコヒーレント相関の解明
Project/Area Number |
23350013
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
板倉 隆二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (80334241)
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Keywords | 強レーザー場 / イオン化 / 励起 / 多チャンネル / コヒーレンス |
Research Abstract |
本研究は、強レーザー場中にて起こる分子のイオン化について、イオン化前後のダイナミクスの相関さらに、イオン化後の複数チャンネルの相関について明らかにすることを目指すものである。本年度は、下記の4項目について行った。 1.回転波束のポンプ・プローブ実験:強レーザー場によって生成した中性窒素分子の回転波束を生成した後、さらに高強度のレーザーパルスを、遅延時間を変えながら照射し、イオン化収量の変化を観測することによって回転波束をプローブすることができた。 2.中性とイオンを相関させた時間依存計算:中性からイオン化への分布減少は、虚数ポテンシャルを用いることで再現できることが項目1の実験からも明らかになった。計画では、イオン化後の回転波束も符号を逆転させた虚数ポテンシャルを使って湧き出しを表現し、計算に組み込む予定であったが、光電子との相関の重要性に気付き、項目4を完了させた後、イオン化後の回転波束のケーススタディに戻る予定。 3.高分解能光電子エネルギー分析器開発:比較的高速(>2eV)の光電子観測のため飛行時間型のエネルギー分析器を開発し、チタンサファイアレーザー増幅器の出力の高次高調波(3および5次)を使ってCsの電子励起状態のプローブをすることができた。また、低速の光電子(<10eV)の観測のために、イメージング検出器を用いた光電子画像測定装置を設計・製作するとともに、既存の光電子・光イオン同時計測装置を使って、エタノールのイオン化とイオン化後の励起を分離することに成功した。 4.多チャンネルイオン化理論の構築と数値シミュレーション:希ガス1価イオンのスピン軌道2準位へのイオン化をモデルケースとして光電子・イオンコア相関の理論を構築し、ダブルパルス照射によって、生じる光電子の干渉からイオンコアのコヒーレンスが見いだせることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光電子とイオンコアのコヒーレンス相関に関して、理論構築が完了し、モデルケースであるスピン軌道2準位について数値シミュレーションも最終段階に入った。これを分子の回転や振動にさらに適用していけばよい。 実験の面からも、高次高調波発生によって得た真空紫外パルスによる光電子分光の目途がつき、データ取得のフェーズに入りつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要項目は、光電子観測を通して、イオン化前の中性状態のダイナミクス、およびイオン化後のコヒーレント相関を明らかにすることである。現在、マンパワーが不足していることからも、申請時の計画通り、特に、光電子観測の実験・理論に集中して研究を進めていく。
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