2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
篠田 渉 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (70357193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
都築 誠二 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10357527)
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Keywords | 自由エネルギー / ベシクル間相互作用 / 脂質混合効果 / 膜融合 / ストレス / ストーク |
Research Abstract |
膜融合における脂質組成の影響を調べるため、開発した双極性脂質の粗視化分子モデルを用い、ベシクル-ベシクル間の相互作用を自由エネルギー計算によって調べた。その結果、脂質の自発曲率やヘッドグループの官能基によって、ベシクル間相互作用が大きく変わり、ホスファチジルコリン(PC)をヘッドグループに持つDMPCベシクル間は単純な斥力相互作用を示したが、ホスファチジルエタノールアミン(PE)をヘッドグルーブに持つDOPEベシクル間ではコンタクトの距離で引力相互作用を示した。この結果はジャイアントベシクル間で観測された実験結果と一致し、PE膜間で付着性を示すことがわかった。さらにPC/PEの混合系ではベシクルが押しつけられたときにその変形の自由エネルギーが低くなることが分かった。これは変形によって膜の曲率が変化するにつれて、膜面内で自発曲率の異なるPCとPEが非一様に分布することによってもたらされる特徴で、混合系では、一般に膜の柔軟性が上がり強い外力に対してもエネルギー損を少なくできることが分かった。なお、付着したPEベシクル間も融合プロセスの進展はみられなかった。そのため、融合中間体(ベシクル外膜間が繋がった状態)を人工的に形成させ、そのストーク構造の安定性を観測した。PEベシクル間のストークは成長し中央に逆ミセル相を作ったのに対し、PCベシクルのストークは不安定で消滅した。PC/PE混合系ではPEがストークのネックの部分に集まることでストーク構造が安定となった。このように融合過程は脂質種によって大きく影響を受け、また混合系では融合中間体が安定に保たれやすいことが分かった。この他、ホスファチジルセリン(PS)とカルシウム系の全原子シミュレーションを行ったが、点電荷モデルではカルシウムと脂質極性基の相互作用が強すぎる可能性が示された。Ca2+と周辺分子との相互作用を量子化学計算により測定し、力場と比較する研究にも着手した。水分子との相互作用には問題が見られなかったが、今後ヘッドグループとCa2+との相互作用などの確認が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PCとPEの混合系については順調に融合・付着性を検討できている。ただ、コレステロールやPSの粗視化モデリングがやや遅れているものの、全原子モデルによる計算は着実に進めており、またタンパク質の粗視化モデリングにも着手したため、おおむね計画通りの達成度と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
融合を促進する因子の解明を第一目標として、その追求のため、計画を少し前倒ししてタンパク質モデリングに注力する。PSとCa2+の検討は量子化学計算の負荷が大きいので、タンパク質モデリングを先行させる。SNARE複合体の安定性を再現する粗視化モデリングを急ぎたい。コレステロールのモデリングをできるだけ早めに完成させ、その影響について検討を行う。融合時に膜にかかるストレスの解析を行う方法を考えていくことも重要な課題と考える。
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