2011 Fiscal Year Annual Research Report
斬新なナノサイズ有機反応場の設計に基づく生体反応過程の化学的解明
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23350015
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (70262144)
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Keywords | 有機化学 / 酵素モデル / 活性中間体 / 合成化学 / 分子認識 / システインモデル / ヨウ化スルフェニル / ナノサイズ分子 |
Research Abstract |
酵素の活性部位の構造的特性を採り入れた新規なナノサイズの反応場として、デンドリマー骨格に基づく分子キャビティを開発し、これを内部官能基の立体保護場として活用することで、従来合成困難であった生体反応活性中間体を手に取れる形に安定化するとともに、その構造および反応性を直接的に解明することを目的とした。本年度、研究代表者が以前にプロトタイプとして合成したデンドリマーと比較して、より高い立体保護効果をもつ拡大型デンドリマーを開発した。この分子キャビティの内部空間を活用することで、従来は極めて困難であったシステイン由来の高反応性化学種安定化に成功した。拡大型デンドリマー骨格の構築は、Hartらの方法を改良した手法を用いて行い、中心部にカルボキシル基をもつ分子キャビティを合成した。キャビティ内へのシステインユニットの導入は、カルボン酸とシステインユニットを縮合させアミドとすることで行った。システインチオールの保護基について種々検討したところ、2-ピリジルチオ基が有効であることを見出し、キャビティ中心部にシステインチオールをもつ誘導体を高収率で合成した。これを用いてシステインヨウ化スルフェニルの合成について検討した。ヨウ化スルフェニルは、システインの様々な酸化的修飾の中間体として注目されている高反応性化学種であるが、通常二分子間過程により容易に不均化を起こす。システインチオール誘導体に対しN-ヨードコハク酸イミドを作用させたところ、対応するシステインヨウ化スルフェニルが定量的に生成し、安定な固体として単離することに成功した。これは、システインヨウ化スルフェニルの初めての単離例であり、立体保護基から遠く離れた部位に存在する活性官能基が高い安定性を示したことから、キャビティ型反応場による周縁立体保護効果の有効性が実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な拡大型デンドリマーを開発することにより、生体内に近い部分構造をもつシステインチオール誘導体を合成し、システインヨウ化スルフェニルの単離に初めて成功した。研究目的で提唱したキャビティ型反応場による周縁立体保護というコンセプトの有効性を実証することができ、このコンセプトをさらに展開するための基盤を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた知見を基盤として、チオール誘導体よりさらに反応性の高い含セレン酵素反応中間体に関する研究を推進する。レドックス制御において中心的な役割を果たしているメチオニンスルホキシドレダクターゼの作用機序について、中間体の単離および速度論解析等により、仮説として提唱されている反応素過程を化学的に検証する。
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Research Products
(15 results)