2012 Fiscal Year Annual Research Report
斬新なナノサイズ有機反応場の設計に基づく生体反応過程の化学的解明
Project/Area Number |
23350015
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (70262144)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 酵素モデル / 活性中間体 / 合成化学 / 分子認識 |
Research Abstract |
酵素の活性部位の構造的特性を採り入れた新規なナノサイズの反応場として、デンドリマー骨格に基づく分子キャビティを開発し、これを内部官能基の立体保護場として活用することで、従来合成困難であった生体反応活性中間体を手に取れる形に安定化するとともに、その構造および反応性を直接的に解明することを目的とした。本年度は、メチオニンスルホキシドレダクターゼ作用機序についてのモデル研究を中心に検討した。メチオニンスルホキシドレダクターゼは、レドックス制御において中心的役割を果たす酵素の一つであり、細胞を酸化的損傷や感染から守る機能を担っている。セレン含有メチオニンスルホキシドレダクターゼの作用機序として、活性中心のセレノシステインがメチオニンスルホキシドをメチオニンへ還元し、自身はセレネン酸(RSeOH)となる機構が提唱されている。しかし、この素反応過程については実験的な反応例が全くなく、推測の域を出ていなかった。これは、通常の条件では、生成するセレネン酸が不安定であることが大きな原因となっている。そこで、セレネン酸の安定化が可能と期待されるボウル型分子キャビティを活用することで、想定反応機構を化学的に検証した。まず、ボウル型骨格をもつセレノールとジメチルスルホキシドのモデル反応について検討したところ、酸および水存在下において、対応するセレネン酸が良好な収率で生成することを見出した。これは、セレノールがスルホキシドを還元し、セレネン酸とスルフィドを与えることを実験的に示した初めての例である。次に、メチオニンスルホキシド誘導体を基質とした反応について検討したところ、ジメチルスルホキシドとの反応に比べて速度は遅いものの、セレネン酸とともに、対応するメチオニン誘導体が生成することを明らかにした。さらに、これらの反応の反応機構について、溶媒効果の解析、速度論解析などにより検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レドックス制御において重要な役割を果たしているメチオニンスルホキシドレダクターゼの作用機序について、これまで提唱されていながら化学的検証が困難であった反応素過程の存在を、実験的に証明することに成功した。さらに、構築したモデル系を活用することで、詳細な反応機構についても知見を得ることができており、ほぼ予定通りの進捗状況と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
レドックス制御に関する酵素反応のモデル研究をさらに推進するとともに、活性窒素種とシステインとの相互作用が関与する様々な反応過程について、包括的・系統的解明を目指していく。特に、硝酸エステルの血管拡張作用の作用機序に関するモデル研究など、重要性の高い反応過程から順次展開していく。
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