2011 Fiscal Year Annual Research Report
軸・らせん異種二重キラリティーを有する新分子群の創製と新機能開拓
Project/Area Number |
23350021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲永 純二 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50091244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古野 裕史 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (90335993)
鬼束 聡明 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (60403937)
石塚 賢太郎 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (20531578)
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Keywords | 動的らせんキラリティー / ビナフトールオリゴマー / 酸塩基二元機能触媒 / エキシマー |
Research Abstract |
本研究では,静的キラリティーと動的キラリティーの協同効果がもたらす新現象の発見を基にこの新しい分野の研究に格段の進歩をもたらすべく,軸・らせん異種二重キラリティーを有する新分子群を創出するとともに,その動的らせんキラリティーの外部刺激による制御をとおして新機能の開拓を図ること,また,大局的には超分子キラリティーに関する新概念やその利用のための新方法論を獲得し,キラリティーの化学と技術を格段に進歩させることを目的としている。本年度は(R)-ビナフトールをその3,3'-位でカップリングした(R)-BINOLオリゴマーの合成を行った。3量体についてX線構造解析を行った結果,自己組織化により一次元水分子鎖を取り込んだ超分子チューブを形成することが分かった。本チューブについてプロトン伝導の測定を試みたが,測定途中で結晶が崩壊して測定できず,安定性改善が今後の課題として残った。一方,3量体の両末端にピレニルメチル基を導入した誘導体を別途合成し,そのエキシマー形成の有無を利用して外部刺激による動的構造変化を調べたところ,「twisted rod」型と「twisted helix」型の両構造を溶液のpHにより制御可能であることを見出した。また,新機能開拓研究として(R)-BINOL 2量体の不斉配位子としての有効性を探った。その結果,モノカルシウム錯体が共役エノンに対するニトロメタンの不斉Michael反応の優れた触媒として働くことを見出した。本錯体は二カ所の触媒活性サイト(すなわちBrOnsted酸部と塩基部)を有しているため、触媒上で活性化されたそれぞれの基質は動的軸不斉部の回転により誘導適合(induced-負t)型の反応を起こしていると考えられる。動的軸不斉を有する本BrOnsted酸塩基二元機能触媒系は、今後さらなる展開が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的化合物(ビナフトール2量体~8量体)の少量合成には成功したが,合成担当の研究分担者が一時病欠したため,4量体~8量体についてはその量産化が当初計画よりもやや遅れている。しかし,その他の計画に関しては順調に進展しており,2量体および3量体については興味深い物性や機能が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
4量体以上のオリゴマー分子のグラムスケールでの合成が少し遅れているので,今後研究支援員を活用してスピードアップを図る。なお,初期調査により5量体以上の分子については,らせん構造の繰り返しになることが明らかになっているので,今後は主に2量体~5量体に焦点を絞ってこれら誘導体の合成と機能について詳細な研究を行う予定である。
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Research Products
(3 results)