2012 Fiscal Year Annual Research Report
ポルフィリン精密集積による光合成モデル分子デバイスの開発
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23350022
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小嵜 正敏 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10295678)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | デンドリマー / 巨大分子 / 光捕集アンテナ / クリック反応 / ポルフィリン / 人工光合成 / 共役オリゴマー / 分子集積 |
Research Abstract |
1、共役鎖ネットワークを利用した光捕集アンテナの構築とその集積 巨大分子集積に応用することができる化学反応として代表的なクリック反応である CuAAC 反応によるデンドリマー集積を検討し、Divergent/Convergent 法による効率的なデンドリマー集積法を開発した。その結果、デンドリマー二量体(分子量 7,762)、四量体(分子量 15,414) を高収率で得ることに成功した。この成果により、巨大分子集積体を効率的に合成する方法を確立した。 2、結合定数勾配を利用した配位子選択的導入 二種の亜鉛ポルフィリン (TPP, DEP) を含むパラフェニレン-エチニレンオリゴマー (TPP-DEP-TPP) を合成した。さらに、フリーベースポルフィリンを含む二座配位子三分子とオリゴマー二分子からラダー型集積体を得ることに成功した。三種のポルフィリンをラダー型に集積することで、可視光吸収効率が大きく向上することを明らかにした。以上の結果は、超分子的な手法を用いて光捕集アンテナ分子を構築する新たな方法論を提供するものであり、人工光合成実現のカギとなる光捕集アンテナデバイス開発に大きな寄与をする。 3、ポルフィリンを側鎖に有するオルトフェニレン-エチニレン四量体の合成 共役オリゴマーの高次構造とポルフィリン集積形態やポルフィリン環どうしの相互作用の大きさが密接に関連した興味ある分子を得るためポルフィリンを側鎖として導入したオルトフェニレン-エチニレン四量体の合成法を検討した。ポルフィリンを導入した単量体を合成し、さらに薗頭カップリング反応により二量体、四量体を合成する事に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
パラジウム触媒を用いる方法では低収率でしか得ることができなかったデンドリマー集積体をクリック反応(銅触媒を用いるヒスゲン反応)を利用することで効率よく得ることに成功した。その結果、これまで一連の研究で開発してきた巨大アンテナ分子を精密に集積して大面積アンテナ集積体を構築することに向けて大きく研究が進展した。また、配位結合形成を利用する超分子的手法によって二種類のポルフィリンを有するアンテナ分子を集積してアンテナ集積体を得ることに成功した。この時、ポルフィリンを含む軸配位子を使用することで三種類のポルフィリンを精密集積する事を達成した。これらの成果により配位結合を利用したポルフィリン精密集積を達成するために必要な基礎的な知見を豊富に得るとともに研究の鍵となる基盤技術を習得することができた。さらに、ポルフィリンを側鎖に有するオルトフェニレン-エチニレンオリゴマーの効率的な合成法を確立した。この方法は、メタフェニレン-エチニレンオリゴマーの合成にも応用できる汎用性の高い方法である。そのため、これらオルト型およびメタ型オリゴマー鎖長伸長に向けて大きく展望が開けた。今後、これらオリゴマーの構造修飾を行い外部刺激に応答して様々な集積形態をとることが期待できるポルフィリン集積体を得ることを計画しており、そのための基盤技術を確立することに成功した。また、白金ポルフィリン、亜鉛ポルフィリン、ジニトロベンゼンをそれぞれ三重項増感部、電子ドナー、電子アクセプターとして持つ分子を合成し、励起波長によって電荷分離状態のスピン状態を制御することに成功した。スピン状態制御によって電荷分離状態の長寿命化を達成しており、アンテナ機能と光電荷分離能をもつ人工光合成系の構築に向けて大きく研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
1、外部刺激応答型光捕集アンテナの構築とその集積1 ヒスゲン反応を用いて光捕集機能を持つ共役鎖内包型デンドリマーの共役鎖末端どうしを結合して巨大光捕集アンテナ集積体を構築する。最初に、トリアゾール環を介して共役鎖末端どうしを結合させて、デンドリマーを結合することを検討する。それに加えて、アルキル鎖を介してデンドリマーどうしを結合させることも検討する。前者の方法では共役鎖骨格が分子全体に拡張された剛直な光捕集アンテナ集積体が得られるが、後者のアルキル鎖を介して結合させる場合は光補集アンテナどうしの相対的な配向が柔軟に変化する集積体が得られる。光捕集アンテナ分子の剛直骨格と連結部の柔軟骨格を併有するアンテナ集積体を構築する。ヒスゲン反応を繰り返すことで効率的に巨大集積体を構築する方法を探索する。 2、外部刺激応答型光捕集アンテナの構築とその集積2 ポルフィリンを側鎖に有する長鎖オルト型、メタ型フェニレン-エチニレンオリゴマーを構築する。それぞれのフェニレンエチニレンオリゴマーに特徴的な高次構造利用して、ポルフィリンをらせん型やジグザグ型に集積することを目指す。また、溶媒極性変化やポルフィリン軸配位子の添加により集積体高次構造を制御する。 3、配位結合形成を利用したアンテナ集積 亜鉛ポルフィリンと軸配位子の結合定数は、メソ位アリール基の増加とともに立体障害のため段階的に小さくなることが知られている。前年度、メソ位アリール基の数が異なる二種のポルフィリンを有する光捕集アンテナを合成することに成功している。このアンテナに対し亜鉛ポルフィリン選択的に軸配位子を結合させることを検討する。また、亜鉛ポルフィリン-配位子結合の形成を利用して、複数のアンテナを集積することを検討する。安定な配位結合を形成できる新たな軸配位子の構築も検討する。
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Research Products
(15 results)