2012 Fiscal Year Annual Research Report
未利用カルコゲン資源を反応剤に使う合成化学を実現する金属錯体の創成
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23350027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉本 秀樹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00315970)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金属錯体 / 硫黄 / 酸素 |
Research Abstract |
無機硫黄とルテニウム(II)錯体を反応させ、硫黄がジスルフィドの構造になった二核ルテニウム(III)錯体を合成した。結晶構造を決定すると共に各種分光学的性質を明らかとした。このルテニウム(II)錯体を触媒に、硫黄を硫黄源としてノルボルネンの硫黄化反応を検討した結果、5員環と7員環のチイランが生成することがわかった。 スルフィドイオンとセレニドイオンを原料に用いてスルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(IV)錯体を合成し、末端配位子の効果を系統的に議論した。結晶構造解析や分光学的性質などのシュミュレーションからモリブデン錯体の電子構造解析をおこなった。この結果、末端配位子がオキソからスルフィド、セレニドへと変化するにつれて、LUMO+3のエネルギー順が下がり、LUMO+1軌道のエネルギー準位と入れ替わることがあきらかとなった。電荷遷移がこの順で長波長側に観測されることと一致している。また、スルフィド基やセレニド基を持つモリブデン(VI)錯体も合成し、分光学的性質における末端配位子の効果を系統的に議論した。三級リンに対する原子移動を速度論的に解析した結果、末端配位子が酸素→硫黄→セレンになるにつれて反応速度が飛躍的に増加することを明らかとした。タングステン類似対も合成してその分光学的性質や原子移動能を評価した。 オスミウム錯体を合成し、これを触媒とするアルケンのジオール化反応を入手容易な過酸化水素を酸化剤としておこなった。末端アルケンから内部アルケンまでのジオール化反応が効率よく進行した。また、電子求引基を持つアルケンから電子供与基を持つアルケンまで幅広い基質に適用できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無機硫黄やセレンを原料とする錯体合成は当初の予定通りすすんでいる。これに加えて、容易に入手でき、かつ原子効率の高い過酸化水素を酸化剤とする触媒反応の構築を達成したことは有意義である。それらは天然物合成、医薬品やファインケミカルなどの合成分野で重要で有り、それに適用できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
オスミウム触媒によるアルケンのジオール化反応について、一層の高機能化を図る。天然物・医薬品・ファインケミカルには不斉中心を持つ化合物が多く含まれていることが考慮し、錯体に不斉中心などを導入して、キラル触媒を合成する。不斉ジオール化が上手く進行した錯体では、実際の医薬品の中間体合成などに用いる。オスミウムと同族元素であるルテニウムを用いても同様の反応をおこない、中心元素の効果を明らかにする。 ルテニウム錯体やモリブデン錯体の硫黄付加体の合成に関しては、より一層温和な条件で反応が進行する組合せを検討する。
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