2011 Fiscal Year Annual Research Report
オンライン熱分解-高速液体クロマトグラフィー直結システムの開発
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23350032
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大谷 肇 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (50176921)
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Keywords | 熱分解分析法 / 高速液体クロマトグラフィー / ポリブチレンテレフタレート / マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法 / 構造解析 |
Research Abstract |
ポリマーの解析に広く用いられている熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)では、熱分解により生じた分解物の内、GC分離の段階で気相状態として存在できる、分子量、沸点、及び極性などが比較的低い揮発性分解物を分析対象としている。一方、それらが高い難揮発性分解物については、GC分離の段階で気相状態として存在し得ないため、たとえ生成したとしても解析できないという問題があった。こうした難揮発性分解物の解析を可能にするためには、分析部をGCから高速液体クロマトグラフィー(HPLC)へ置き換えることが解決策の一つとして考えられる。本研究ではまず、熱分解-HPLC直結システム開発のための基礎検討として、ポリマー試料としてHPLCの紫外・可視検出器で検出可能な芳香族環を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)を熱分解し、生成物をマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などにより詳細に解析することによって、どのような分解成分をHPLCの測定対象とすべきかを明らかにすることを試みた。熱分解生成物をHPLCで測定するには溶液化する必要があるため、500℃におけるポリマー試料の熱分解により生成した分解物を一旦冷却捕集し、その後テトラヒドロフランなどの溶媒に溶解、回収して溶液化をはかった。回収されたPBTの熱分解生成物のMALDI-MSスペクトル上には、Py-GCでは一般に観測できないm/z500以上の領域に、PBTの繰り返し単位を多く含む生成物のピークがはっきり観測された。 次にこれらの分解物をHPLCで分析するための条件の検討を行った。アセトニトリル(ACN)/水=80/20(v/v)を移動相として、一般的な逆相系カラムを用いて測定を行ったところ、熱分解GCでは検出できない生成物を一部観測することができた。今後は、MALDI-MSで測定されたm/z=500以上の分解物を含め、すべての分解物生成物の分析を目指して、測定条件をさらに検討する必要がある。 この他、熱分解装置とHPLCをオンライン接続するためのインターフェイスの設計も並行して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の基本システムの設計上に大きな問題があることが、検証の結果明らかになったため、システム設計の大幅な見直しを行ってきた結果、システムの試作を行うには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた、オンライン熱分解HPLCシステムの基本設計に基づいて、実際に装置を試作しその基本性能を検証する。ここでは、代表的なポリマー試料を実際に測定することによって装置の特性を確認し、解決すべき課題を明確にしつつ、適切な対策を講じることによって完成度を高めていく。具体的には、従来の熱分解GCでは限界がはっきり示唆されている試料、例えば紫外線硬化樹脂の反応熱分解による架橋ネットワーク構造解析などに適用し、解析能力を評価する。
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Research Products
(8 results)