2011 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体中に形成される特異な溶媒和構造と自由エネルギー描像
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23350033
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
梅林 泰宏 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90311836)
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Keywords | イオン液体 / 溶媒和 |
Research Abstract |
溶媒和は、分離・精製の素反応であり分析化学の主たる課題の一つといえる。イオン液体は、従来溶媒にない特異的なイオン液体の液体構造性と溶媒和構造を示し、反応溶媒や電解質、分離・精製場として多くの応用が期待されている。液体構造や溶媒和構造などの構造的知見は、分子間相互作用を直感的に理解するうえで有用であるが、真に溶媒和を理解するには量子論、統計力学、熱力学にいたるエネルギー論が不可欠である。本研究は、申請者らが独自に開発した分子シミュレーション支援液体構造解析法によるイオン液体による溶媒和構造解析に加え、分子シミュレーションに基づく溶媒和エネルギー評価により、イオン液体に溶解したCO2に焦点を絞り、構造とエネルギーの両面からイオン液体に特異的な溶媒和を原子・分子レベルで明らかにする。具体的には、以下の研究を進める。 (1) イオン液体中のCO2溶媒和構造と溶媒和自由エネルギー評価 (2) イオン液体中のCO2のプロトン付加反応の構造と熱力学 (3) イオン液体中のCO2の電気化学的還元の分子論 (1)については、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム系イオン液体のアルキル基をブチルおよびオクチルについて、TFSA(ビス-(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)を陰イオンとするイオン液体について、高エネルギーX線回折(HEXRD)実験を行い、MDシミュレーションにより解析し、原子レベルのCO2溶媒和構造を明らかにするとともに、溶媒和エネルギー解析では、引力領域でTFSAの分布が大きく、構造からの描像と一致し、斥力領域では陽イオンとTFSAの分布は概ね一致しており排除体積効果の点で、陽イオンと陰イオンに差がないことを明らかにした。(2)および(3)に関して、予備実験を完了し、概ね良好な結果を得た。今後、詳細な実験および解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)に関して、中性子・X線産卵実験で複雑な分子構造のイオン液体中の低分子CO2の溶媒和構造を明らかにすることは極めて困難である。本研究は、この困難を克服するとともに、分子動力学シミュレーション解析により、原子レベル分解能でCO2の溶媒和構造を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で特に大きな問題はなく、研究計画に沿って研究を進める。
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