2011 Fiscal Year Annual Research Report
極表面分析用全反射減衰遠紫外分光分析装置の開発と高分子極表面分析への応用
Project/Area Number |
23350037
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾崎 幸洋 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00147290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森澤 勇介 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (60510021)
佐藤 春実 関西学院大学, 理工学研究科, 専門技術員 (10288558)
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Keywords | 遠紫外分光 / 電子状態 / 高分子 / 表面分析 / 全反射吸収 / ポリエチレン / 表面物性 |
Research Abstract |
近年、高分子の表面装飾や表面処理が注目を集めている。優れた表面の作製には、ナノメートルオーダーの物性や組成を官能基レベルで分析することが有用である。従来高分子の表面物性分析に用いられてきた減衰全反射(Attenuated Total Reflection; ATR)-赤外分光法では、分析深さは数umである。分析深さは波長に比例するので、遠紫外領域(FUV:120-200nm)領域では分析深さが数十nm程度となり、これまでに比べてはるかに薄い表面に局在した情報を分析できる。本研究では、固体極表面分析用ATR-FUV分光器を設計し、その開発に成功した。これを用いてポリエチレンの測定を行い、液体、固体アルカンとピーク位置や形状を比較することによって、ATR-FUVスペクトルの変化について考察した。またAFMを用いて、表面の形状とスペクトルとの比較も行った。 どのサンプルでも156nm付近にピークを観測することができた。強度の変化も見られるが、サンプルの種類ではなく、サンプルの測定箇所によって変化している。LLDPEとLDPEの180-200nm付近に小さなバンドが観測された。結晶化度が33.3%以下のものに観測されたが、特に結晶化度順にはなっていない。LDPEとLLDPEは結晶化度と同様にスペクトルの形、ピーク位置が類似していた。 LDPEとHDPEは結晶化度と同様にスペクトルの形、ピーク位置が異なっていた高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)のATR-FUVスペクトルにおいて、ポリエチレンの結晶化度によってスペクトルの形やピーク位置が異なることがわかった。液体、固体アルカンと比較すると、ピーク位置や枝分かれの有無とバンドの形から、LLDPEとLDPEに観測される180-200nmの小さなバンドは枝分かれの情報を持っていると考えられる。ポリエチレンのピーク強度はサンプル表面の構造を反映していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した装置は予定通りに完成し、順調に機能している。各種高分子のスペクトル測定も進んでおり、目下スペクトル解析も進めている。まだ高分子の表面分析について得られる確実な情報が明らかになっていないが、まもなくそれもわかりそうである。平成23年5月には国内学会で、9月には国際会議で成果発表の予定である。まもなく装置開発について特許取得と論文作成を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに進める予定である。すなわち、物性の異なるポリエチレンの測定と高分子分析法の確立に努める。そのため特にスペクトル解析を進める予定である。新たに量子化学計算を行い、それによって、スペクトルと電子状態、さらには物性との関係を明らかにする。
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Research Products
(5 results)