2012 Fiscal Year Annual Research Report
極表面分析用全反射減衰遠紫外分光分析装置の開発と高分子極表面分析への応用
Project/Area Number |
23350037
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾崎 幸洋 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00147290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森澤 勇介 近畿大学, 理工学部, 講師 (60510021)
佐藤 春実 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10288558)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遠紫外分光法 / 電子状態 / 表面分析 / HOMO / ポリエチレン / 減衰全反射分光法 |
Research Abstract |
遠紫外(far-ultraviolet; FUV)領域の分光学は分子の電子遷移について興味を持たれているが、FUVスペクトルの研究は長く気相分子に限られていた。なぜなら、液体や固体のサンプルでは吸収が強く、FUVバンドの全てを観測するのが困難であった。報告者らは固体サンプルのFUV分光学の基礎をもたらすため、新しく開発した減衰全反射(attenuated total reflection; ATR)遠紫外(FUV)分光器を用いて、高密度ポリエチレン(high-density polyethylene; HDPE)と低密度ポリエチレン(low-density; polyethylene; LDPE)のFUVスペクトルを測定した。それぞれの固体サンプルは明確なスペクトルと分子の構造の関係を生み出す、特徴的なスペクトルパターンを示す。HDPEには7.95 eVに大きなバンドが観測された。LDPEには7.95 eVに大きなバンドと、その低エネルギー側にブロードなバンドが観測された。液体n-アルカンのFUVスペクトルと比較すると、ポリエチレンの7.95 eVのバンドと、液体n-アルカンの8.3 eVのバンドは同じHOMOから3pの遷移とHOMO-1から3sの遷移の重なりと帰属が示唆される。ATR測定と同じサンプルを透過で測定すると、HDPEには複数の小さなバンドが観測され、LDPEには6.53 eVにバンドが現る事が分かった。結晶化度、密度、融点が大きくなるにつれ、そのバンドの強度は小さくなる。これは、バンドが非晶質由来であることが示唆される。 ATR-FUV分光学を用いる事で、液体アルカンと同様のリュードベリ状態に一致するポリエチレンの遷移の吸収を測定する事に成功したと考えられる。量子化学計算によるスペクトル解析も進めつつある。本研究は、ATR-FUV分光学の有用性を立証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
固体用のATR-FUV分光器は初年度に完成させ、本年度は部分的、特に試料部付近の改良を行った。予定通り装置としては完成させることができたといえる。ポリエチレン、ナイロンをはじめ多くの試料のATR-FUVスペクトル測定ができた。その解析もかなり進んできている。ただスペクトルのS/Nをもう少し向上させる必要がある。スペクトル解析を行うため量子化学計算を進めており、ナイロンについてはよい結果が得られつつあるが、ポリエチレンについては課題を残している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策の重点は以下の2点である。ひとつはATR-FUVスペクトルのS/Nを向上させること、もう一つはスペクトル解析を一層進めることである。S/Nを向上させるために、装置の試料部の一層の工夫を行うとともに試料そのものの工夫も行う。また曲表面という観点からATR-FUVスペクトルとAFMの測定の比較にも力を入れる。スペクトル解析をさらに進めるため、量子化学計算を進展させる。また固体と液体のスペクトルの比較を深める予定である。
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Research Products
(4 results)