2012 Fiscal Year Annual Research Report
電子不足イミン類への異常付加を活用する高効率的含窒素化合物の合成
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23350040
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
清水 真 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30162712)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 極性転換付加反応 / β,γ-不飽和-α-イミノエステル / α,β‐不飽和‐α‐アミノラクトン / オキシムスルホナート / イミニウム塩 / N,N-ジアルキル化 / N,N,C-トリアルキル化 |
Research Abstract |
α-イミノエステル誘導体など、α位に電子求引基を有するイミン誘導体の極性転換共役付加反応を含む異常付加を基盤としたタンデム反応等の各種多段階反応の探索と、ファインケミカルズの効率的合成への展開を検討した。特にβ,γ-不飽和-α-イミノエステルに対し、極性転換共役付加反応後生成するジエノラートにγ-アルキル化を行い、生成するエナミンをさらにアルキル化し、ビスタンデムアルキル化の可能性を探った。すなわち、β,γ‐アルケニル‐α‐イミノエステルに対する極性転換反応によるN-アルキル化反応を、副反応であるイミンへの共役付加反応を立体障害により制御し、高収率で進行させることに成功した。また、N-アルキル化反応後に得られるジエノラートに対してアルデヒドを作用させることで、γ位選択的に付加反応を進行させ、α,β‐不飽和‐α‐アミノラクトンを良好な収率で得ることにも成功した。 また 、α位に電子求引基を有するオキシムスルホナートに対し、窒素原子上でのSN2型の求核置換反応を活用して窒素原子に二つの異なる置換基を導入し、イミニウム塩に変換した後に第三の求核剤と反応させ、一挙に三種類の置換基の導入を検討した。すなわち、Z体のトシルオキシイミノエステルに対して、Grignard試薬を作用させることで、N,N-ジアルキル化体が得られることを見出した。さらにN,N-ジアルキル化反応の後に酸化を行い、イミニウム塩を形成し、次にGrignard試薬を作用させることで、イミノ炭素上でC-アルキル化反応がおこり、N,N,C-トリアルキル化体が得られることも見出した。また、E体のノシルオキシイミノエステルを用いることで窒素原子上に異なる置換基を導入できるN,N-ジアルキル化反応が進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
α-イミノエステルはアルコキシカルボニル基の存在により、イミノ窒素上への極性転換付加が起こりうる特徴を持つイミンである。α-イミノエステルに対し有機アルミニウム試薬を付加させることで、イミノ窒素上への付加反応であるN-アルキル化反応が良好に進行することを見出し報告している。基質をβ,γ-アルケニル-α-イミノエステルへと拡張し、様々なGrignard試薬によるN-アルキル化反応の検討を行った。検討の結果、アルケン部位の末端の置換基を立体障害の大きいものにするか、もしくは二置換とすることにより、副反応の不飽和イミンへの共役付加を抑え、N-アルキル化生成物の収率を向上させることに成功した。また、N-アルキル化反応を進行させた際に生じるジエノラートに対して、求電子剤としてアルデヒドを作用させることで、γ位選択的付加および環化反応が進行し、α,β-不飽和-α-アミノラクトンを合成できた。 また、α-スルホキシイミノエステルに対して、求核剤として様々なGrignard試薬を用いて反応を行った。Grignard試薬を2.2当量加え、トルエン溶媒中、室温で15分間反応させることで、それぞれ対応するα-アミノエステルを得られることを見出した。また、N,N-ジアルキル化進行後に酸化を行った後、もう一分子のGrignard試薬で求核付加反応を行うことで、様々なN,N,C-トリアルキル化体が得られることを見出した。 このように目標としたα-イミノエステルの基質をβ,γ-アルケニル-α-イミノエステルへと拡張することと、α-スルホキシイミノエステルに対するN,N-ジアルキル化およびN,N,C-トリアルキル化反応に成功し、25年度は異なる3種類の求核剤によるN,N,C-トリアルキル化反応に挑戦できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成24年度に見出した各種反応のブラッシュアップとともに、得られた知見をもとに多段階反応を不飽和α-イミノエステルおよび新しいオキシムスルホナートを基質として用い、トリスタンデム反応 およびトリアルキル化反応にまで拡張したい。具体的には以下の計画による。 (1) β,γ-不飽和-α-イミノエステルに対して有機金属試薬を作用させることにより、N-アルキル化された 中間のジエノラートを効率良く発生させ、それに対しアルデヒドを作用させα-およびγ-アルキル化の位置選択性をさらに詳細に検討する。 (2) 位置選択的にγ-付加反応が進行する条件を見出し、生成するヒドロキシエステルを環化し選択的なラクトン合成の可能性を探る。 (3)ビスタンデムアルキル化後、生成するイミニウム塩に対しても求核付加反応を検討し4段階連続反応が可能である事を明らかにしたい。(3)上述のオキシムスルホナートのN,N-ジアルキル化により得られたエノラートを、酸化することにより得られるイミニウム塩に対し 、第三の求核剤を反応させ、C=N結合に対する異なる三種類の求核剤によるトリアルキル化反応を実現する。 (4)上述のエノラートに対し、酸化剤を作用させるかわりに求電子剤によるアルキル化を検討し、アルキル化 剤の適応範囲を拡張する。 (5)この反応を応用し、各種多置換アミノ酸およびエステルの一般的合成法に発展させたい。さらに検討しているマイクロリアクターおよびミキサーを用いる反応の知見を活用し、フロー合成への展開を図る。
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Research Products
(12 results)