2012 Fiscal Year Annual Research Report
π共役系高分子の精密合成を志向した高効率C-H結合アリール化触媒の開発研究
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23350042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小澤 文幸 京都大学, 化学研究所, 教授 (40134837)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 直接的アリール化 / パラジウム触媒 / 触媒反応機構 / π共役系高分子 |
Research Abstract |
1. 昨年開発した触媒中間体モデル([PdAr(μ-OAc)(PPh3)]n)を用いて種々のヘテロアレーン類の競争反応を行い,直接的アリール化反応に対する反応性比を求めた:ベンゾチアゾール(0.39)<2-メチルチオフェン(1)<ベンゾチオフェン(3.9)<5-メチル-2,2'-ビチオフェン(8.2)<2-フェニルベンゾチアゾール(35)<ペンタフルオロベンゼン(95). 2. これまで,ヘテロアレーン類の反応性は,主にC-H結合切断過程に関するDFT計算をもとに議論されてきた.一方,本研究では,反応速度論とDFT計算を組み合わせることにより,C-H結合切断過程のみならず,基質配位と還元的脱離も含めた複合的な因子によりヘテロアレーン類の反応性が制御されていることを明らかにした.たとえば,2-メチルチオフェンの反応の律速段階は還元的脱離であり,速度論的同位体効果は観測されなかった(kH/kD = 1.0).一方,ベンゾチアゾールの反応の律速段階はC-H結合切断過程であるが(kH/kD = 3.3-5.5),ベンゾチアゾールが窒素原子によってパラジウムに強く配位するためC-H結合切断の前駆錯体である配位錯体が安定化し,これにより反応速度が顕著に低下することが分かった. 3. AA/BB型モノマーの直接的アリール化重合に高活性なパラジウム触媒系を開発した.THF中,炭酸セシウムと酢酸(あるいはピバル酸)の存在下,Pd2(dba)3(0.5 mol%)とP(o-MeOC6H4)3(2 mol%)を触媒前駆体に用いて,2,7-ジブロモ-9,9'-ジオクチルフルオレンと1,2,4,5-テトラフルオロベンゼンを反応させ,極めて分子量の高い交互共重合体(Mn = 347700)が合成された.本反応系では,従来の約1/10の触媒量により,従来の約10倍の分子量をもつポリマーが定量的に得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年開発した触媒中間体の精密モデルを利用し,実験的手法と理論的手法を組み合わせて,直接的アリール化反応機構の精密解析にはじめて成功した.すなわち,直接的アリール化反応におけるヘテロアレーン類の反応性が,従来の想定とは異なり,C-H切断過程のみならず,ヘテロアレーンの配位や直接的アリール化生成物の還元的脱離を含めた複合的な因子により制御されていることを明らかにした.また,有機薄膜太陽電池の開発に必要なドナー・アクプター型π共役系交互共重合体の合成(AA/BB型モノマーの直接的アリール化重合)に高活性を示す新たなパラジウム触媒系の開発に成功した.これらの成果は,本研究が目標とする,(1)直接的アリール化反応機構の解明,(2)well-defined触媒の開発,(3)連鎖型重縮合(リビング重合)への展開,の3項目を達成する上で,重要な研究基盤となるものであるが,論文のとりまとめがやや遅れていることを踏まえ,②の評価区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年となる平成25年度は,上記の研究成果を基盤とし,(a)AA/BB型直接的アリール化重合触媒の適用範囲の拡大と,(b)連鎖型重縮合(リビング重合)への展開,の2点に重点をおいて研究を展開する.本研究は順調に進展しており,研究計画に変更はない.
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Research Products
(16 results)