2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23350048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐田 和己 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (80225911)
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Keywords | イオン対 / 高分子電解質 / 刺激応答性高分子 / 有機溶媒 / テトラフェニルボレート / ラジカル重合 / 静電斥力 |
Research Abstract |
水や極性有機溶媒以外の炭化水素を含む無極性有機溶媒・フッ素系溶媒・液晶など多様な媒質中で解離するイオン対を創製し、その分子設計原理を明らかすることを目的に、まず、コアと成る嵩高い置換基を導入したイオンの合成に着手した。嵩高いアニオンとして、テトラアリールボレートを選び、4つのフェニル基に重合開始点を導入し、これを用いて、重合反応を行うこととした。実際にはリビングラジカル重合の開始剤であるα-ブロモイソ酪酸誘導体の導入に成功した。これを用いて予備的にスチレンの重合を検討したところ、4つの開始点から重合が起こり、スチレンで覆われた嵩高いアニオンが合成できることが明らかになった。 また、静電斥力と分子間引力を均衡させることで、水以外の媒質中で高分子鎖の溶解・分散状態の制御および高分子鎖の凝集・伸張の制御を自在に設計できる基本原理の解明をめざし、非極性溶媒中で強い水素結合を形成する尿素官能基をもつ高分子に親油性のイオン対を導入した。非極性有機溶媒中での加熱により、高分子鎖間の水素結合の切断を行い、温度応答性の葉発現を期待した。5-10mol%程度のイオン性官能基の導入によって、イオン解離できる環境下では、イオン反発が生じ、イオン性高分子の著しい溶解性の向上が見られた。結果的には条件を選ぶことにより、いくつかの系でUCST型の温度応答性の発現に成功した。この知見は動的機能高分子材料のde novo設計として、イオン解離は高分子間に非常に強力な斥力を生じ、通常の水素結合程度では、高分子間の引力とバランスをとることが困難であることを示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である様々な媒質でイオン解離可能な"親媒質性イオン"の創製に向けて、これまでのアプローチとは異なり、嵩高いアニオンに重合開始点を組み込むこと成功し、実際にスチレンの重合に成功し、"親媒質性イオン"の合成の見込みがついたため。それと平行して、動的機能高分子材料のde novo設計として、強い水素結合性官能基である尿素を用いた親油性高分子電解質の合成に成功した。しかしながら、温度応答性についてはイオン性官能基間で静電斥力が強く働き、刺激応答性の実現という点からは十分な結果ではなかった。しかしながら、静電斥力に見合う強い分子間相互作用の導入、またはより弱い相互作用の利用が鍵であることが明らかになり、刺激応答性高分子のグランドデザインに一石を投じる結果が得られたから。
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Strategy for Future Research Activity |
重合開始点を組み込んだ嵩高いアニオンを用いて、様々なモノマーを用いた重合を行い、数nmの半径をもつ大きなアニオンを合成する。さらの同様な手法で重合開始点を組み込んだ嵩高いカチオンを合成し、そのイオン対を用いて、重合を行い、"親媒質性イオン"の合成を行う。さらのそのイオン解離の挙動を検討する。それと平行して、動的機能高分子材料のde novo設計として、水素結合や電荷移動錯体などの弱い引力を用いて、外部からその分子間引力を弱める添加剤を加えることで、様々な動的機能高分子材料の分子デザインを明らかにする。またより強い分子間力で会合しているような高分子に親媒質性イオンを導入し、溶解性の向上と刺激応答性の付与を検討する。
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Research Products
(39 results)