2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350048
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐田 和己 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80225911)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオン対 / ラジカル重合 / 高分子電解質 / 刺激応答性高分子 / 静電斥力 / 有機溶媒 / テトラフェニルボレート |
Research Abstract |
疎水性の高いイオン対(テトラアルキルアンモニウム テトラフェニルボレート塩)を親油性の高い高分子鎖(ポリ(オクタデシルアクリレート))に導入することにより、低極性有機溶媒中(クロロホルムやTHFなど)でイオン解離し、この高分子が高分子電解質として機能するを電気伝導度測定や溶液粘度測定などによって立証した。これは媒質中で解離できるイオン対を自在にデザインできれば、その解離を利用し、同符号間の静電斥力をその媒質で用いることができることを示しており、これまで水のみであった静電斥力を一般的な媒質まで拡張することができた。複数のテトラフェニルボレートイオンを持つ分子を設計することで、非極性有機溶媒中でのイオン解離の促進を試みたところ、複数のイオンペアーの解離が観測され、より活量の大きい電解質がデザインできることを明らかにした。さらに疎水性の高いイオン対を液晶高分子または液晶高分子ゲルに導入し、イオン解離によるゲルの膨潤の効果と液晶の異方性を同時に発現する系を検討した。その結果、大きな膨潤特性を持ちかつ異方的に膨潤するゲルの合成に成功した。 また、親媒質性イオン対を含む高分子電解質に、その媒質中で分子間引力を発生する官能基を導入し、静電斥力と分子間引力を均衡させることで、高分子の溶解・分散状態の制御および高分子鎖の凝集・伸張を制御する方法論の確立を目指した。わずかなイオン対の導入が高分子の溶解性が劇的に変化させてしまうことを発見した。この知見を基にして、非プロトン性非極性有機溶媒中でのアミド・尿素などの水素結合部位を有する高分子に第3成分として、水素結合性の低分子を共存させることで、高温での低分子と高分子間の水素結合の切断を起させ、溶解性を著しく低下させることに成功した。これはこれまで分子設計が困難とされてきた下限臨界共溶温度をもつ高分子を人工的に設計したことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疎水性の高いイオン対を液晶高分子へ組み込むことに成功し、液晶中で挙動する高分子電解質としての新しい機能発現に成功した。また当初の目的である様々な媒質でイオン解離可能な”親媒質性イオン”の創製に向けて、これまでのアプローチとは異なり、嵩高いアニオンに重合開始点を組み込むこと成功し、実際にスチレンの重合に成功し、”親媒質性イオン”の合成の一歩が進んでいる。 また動的機能高分子材料のde novo設計として、強い水素結合性官能基である尿素を用いた親油性高分子電解質の合成に成功した。それらの結果から、温度応答性についてはイオン性官能基間で静電斥力が強く働きすぎ、刺激応答性の実現という点からは難しいことが明らかになった。その結果を考察することにより、これまで分子設計が困難とされてきた下限臨界共溶温度をもつ高分子を人工的に再現できるシステムの開発に成功し、その分子デザインを明確にすることができた点は大変興味深く、今後の展開が期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
重合開始点を組み込んだ嵩高いアニオンを用いて、様々なモノマーを用いた重合を行い、数nmの半径をもつ大きなアニオンを合成する。さらの同様な手法で重合開始点を組み込んだ嵩高いカチオンを合成し、そのイオン対を用いて、重合を行い、”親媒質性イオン”の合成を行う。さらのそのイオン解離の挙動を検討する。それと平行して、動的機能高分子材料のde novo設計として、水素結合や電荷移動錯体などの弱い引力を用いて、外部からその分子間引力を弱める添加剤を加えることで、様々な動的機能高分子材料の分子デザインを明らかにする。またより強い分子間力で会合しているような高分子に親媒質性イオンを導入し、溶解性の向上と刺激応答性の付与を検討する。親媒質性イオン対を含む高分子電解質に、その媒質中で分子間引力を発生する官能基を導入し、静電斥力と分子間引力を均衡させることで、高分子の溶解・分散状態の制御および高分子鎖の凝集・伸張を制御する方法論の確立を目指す。また、静電斥力を利用した難溶性高分子の分散・可溶化について、検討を行う。特に疎水性の残基をもつポリペプチドは水への難溶性からこれまで研究がほとんど進んでいない。そこで疎水性の高いイオン対をポリペプチド鎖に導入し、非極性溶媒中へのポリペプチド鎖の分散化・可溶化を検討し、疎水性ペプチドのHPLCを用いた精製法の確立について検討を行う。また親媒質性イオン対をカーボンナノチューブやグラフェンなどのナノカーボン類や共役高分子などの難溶性の高分子に導入し、与えられた環境下での分散性・溶解性の向上を行う。
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Research Products
(34 results)