2011 Fiscal Year Annual Research Report
磁性半導体ナノ結晶の磁気光学効果増強のための内部・表面磁気構造制御
Project/Area Number |
23350057
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 靖哉 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80324797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伏見 公志 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (20271645)
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Keywords | ナノ結晶 / 磁気特性 / 希土類 / 機能材料 / 表面 |
Research Abstract |
本研究「磁性半導体ナノ結晶の磁気光学効果増強のための内部・表面磁気構造制御」を行うために、23年度はナノ結晶中への金属ドープによる希土類半導体ナノ結晶のスピン状態解析および機能向上因子を集中的に検討した。 具体的には、ユーロピウム錯体とマンガン錯体を合成し、これらの錯体をオレイルアミン中で300℃にて熱還元反応をおこなうことににより、磁性半導体EuS中へ常磁性マンガンイオンのドープを試みた。反応させる2種類の錯体の混合比を詳細に検討することにより、常磁性マンガンイオンがドープされた磁性半導体EuSナノ結晶の合成に成功した。この常磁性イオンドープの構造は、EuS結晶のXRDシグナルのシフトおよびICP測定により明らかにした。さらに、形状および粒径については透過型電子顕微鏡により観察した。 得られたマンガンイオンドープEuSナノ結晶は、マンガンイオンがドープされていないEuSナノ結晶(ほぼ同じ粒径のもの)に比べて磁気特性の向上(保持力の向上)が観測された。この磁気特性向上にともない、印可磁場150000eにおけるファラデー回転(磁場印加中の物質に偏光をあてると、その偏光面が回転する現象:ファラデー回転)が可視光領域において増大することが明らかとなった。 この磁気特性における保持力増大とファラデー回転の増大は、EuSナノ結晶内に常磁性マンガンイオンが導入され、EuS中のスピン状態が変化したことに起因すると考えられる。このスピン状態変化を観察するためにESR測定を行ったところ、常磁性マンガンイオンをドープしたESRシグナルの一次微分によるスペクトルの半値幅が極端に狭いことが明らかとなった。この狭い半値幅は磁気的交換相互作用が通常EuSのESRに比べて大きいことを示すことから、本研究により常磁性イオンのEuS結晶中へのドープはスピン状態および光磁気物性に大きな影響をおよぼすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であった磁性半導体EuSナノ結晶中への常磁性マンガンイオンのドープに初めて成功し、マンガンイオンによる磁気的交換相互作用の発現を観測した。さらに、磁性半導体ナノ結晶の磁気および光磁気特性(機能)が向上することを初めて明らかにしたため、当初の研究計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に成功した磁性半導体のスピン状態制御の効果について、その詳細を明らかにるために、他の常磁性イオンドープについて試みる。具体的には、鉄イオンおよびコバルトイオンを含む錯体を合成し、ユーロピウム錯体と混合して熱還元反応を行うことで、鉄イオンドープおよびコバルトイオンドープEuSナノ結晶合成を試みる。化合物同定にはICPおよびXRDを用い、機能評価は磁気測定、ファラデー効果測定およびESR測定にて行う。
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