2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機超伝導・半導体デバイスを目指した光増感反応による多環縮合芳香族分子の開拓
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23350059
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山路 稔 群馬大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20220361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 秀毅 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (30204043)
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Keywords | 有機超伝導性 / 有機半導体性 / 光増感縮環法 / ピセン / フェナセン / 三重項吸収 / 電界効果トランジスタ / フルミネン |
Research Abstract |
本年度の研究目標は1)ジナフチルエタン(DNE)誘導体から光増感多環縮合反応により相当するピセン誘導体が生成する事を確認することによる反応の一般化、2)レーザー光分解法を用いた光増感多環縮合反応機構の解明、3)光多環縮合反応によりピセン以外の高次フェナセン類の作成とその応用であった。研究実施計画に従い研究を進め、それぞれの研究目標を達成する事ができた。 1)ピセン骨格形成に対する光増感縮環法の汎用性を確かめるために、いくつかの様式の置換基を有するDNE誘導体を準備し対応するピセン誘導体の光増感多環縮合法による生成を試み、原料のDNE誘導体の置換基はピセン骨格形成後も保たれていることが確認できた。その置換基を基点に反応点を形成することで、新たなピセン誘導体を作成する事ができた。このことは、将来ピセン骨格を有機デバイス応用するときの試料合成法として期待されている。 2)パルスレーザー光を用いて9-フルオレノン(9F)を励起し、9Fの三重項生成の過渡吸収測定を行った。9F三重項の吸光度は、ピセンの生成収率の小さい四塩化炭素中よりも収率の大きい溶媒であるクロロフォルム中の方がはるかに小さかったため、9Fの励起一重項が溶媒と何らかの相互作用により発生する化学種が縮合反応に寄与することが示唆された。 3)光増感縮合反応によりフェナンスリルナフチルエタンから[6]フェナセン(フルミネン)が生成する事を確認し、フルミネンのNMR、吸収、ケイ光、リン光、三重項-三重項吸収スペクトルを始めて観測した。ベンゼン環数が3から6までのフェナセンの光物理・光化学特性を系統的に得ることで、高次フェナアセンのこれらの特性が予測可能になった。また、フルミネンの薄膜電界効果トランジスタ(FET)はピセンのFETよりも大きな電界効果移動度を示し、フルミネンの半導体性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標とした1:ピセン誘導体作成による光増感縮環法の一般化、2:縮環反応機構の解明、3:光増感縮環法の応用による高次フェナセン(フルミネン)の作成とデバイス化によるフルミネンの有機半導体性への応用の可能性の提示、を順調に達成しているから。
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Strategy for Future Research Activity |
光増感縮環法を用いて1:ヘテロ原子を含むフェナセン誘導体の創製、2:二次元方向に展開したグラフェンリボン・パッチの創製を試み、これらの化合物の光化学・光物理的特性、半導体性、超伝導性について検討を行う。このよなベンゼン環を多数含む高次フェナセンやグラフェンでは、有機溶媒への溶解性が著しく小さくなることが考えられるので、適当な置換基導入を行うことにより、溶解性を高める工夫が必要と考えている。
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Research Products
(6 results)