2011 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液中の酸化チタン単結晶表面における光生成ホール消費プロセスの表面構造依存性
Project/Area Number |
23350065
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
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Keywords | 酸化チタン / ステップ / 光酸化反応 / 水分解 / 単結晶 / 表面 / 電気化学 |
Research Abstract |
水溶液中のルチル型TiO2単結晶表面状における酸素発生、発光、表面エッチング、無輻射失活の4つの競争反応の表面構造に対する影響を明らかにするための実験を行った。実験は、0.1M HClO4中でTiO2基板に水銀灯とバンドパスフィルターを使って紫外線照射、電位印可して行った。 本年度は、ステップ密度およびステップ方向の異なる微傾斜TiO2単結晶板の(110)面を用意し、水中、紫外光照射(高圧水銀灯)下での発光エネルギー、強度、また酸素発生による光電流、発光減衰速度を測定した。これによって、テラス幅の違いによる影響およびステップ端サイト構造の違いによる影響を調べた。これにより、上記4つの競争反応の比(ホールの消費比)が、step-terrace構造に大きく依存することが明らかになった。特に、表面ラフニングの反応速度は、step密度が高くなればなるほど、増大し、また、同じ指数面、同じstep密度においても、stepの結晶構造(すなわちstep方向)に大きく依存することが分かった。このことは、表面ラフニングがstep端を発端として起きていることを意味している。一方、これらの競争反応比の経時変化を調べたところ、光酸化反応が進むにつれて、反応比が変わっていくことが分かった。特に、ラフニング反応に関しては、徐々に遅くなっていく傾向が見られ、特定の安定構造へ向かって表面局所構造が変化していっていることを意味している。他にも、step-terrace構造の異なる結晶面を使い、ホールが特定方位に拡散することを明らかにし、この異方性が4つの競争反応比へ影響を与えている可能性を示唆するデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(110)面に関しては、おおむね予定していたデータが得られており、次の課題へ必要なデータは揃っている。上にも記述したように、今回の実験により、単結晶表面上において、step端の配置や結晶構造そのものが、ホールの消費プロセスに大きな影響を与えることが分かってきた。本年度の目標は、まずは4つの競争反応に対するstep-terrace構造の影響を解明することであったので、目的の最も大きなところは達成出来たと考えている。 ただし、発光測定など非常に微弱信号でセンシティブな測定が予想以上に時間がかかり、(100)面など他の指数面を用いたデータがまだすべて得られていない。他の面を利用することによって、terraceおよびstepサイトの結晶構造をさらに細かく制御することが可能になる。特に、terrace面の結晶構造については、面指数を変えるしか方法がなく、異なる結晶面を使っての実験が必要になると考えている。今後、これらの目的を達成させるために、ペースを速めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、面指数やstep構造の異なる単結晶面を用いた実験および、温度依存性の実験などを行い、表面構造と表面反応ダイナミクスの詳細な関係を調べていく。一方、今後はこれらの結果をもとに、溶液側の性質を変化させ、実験を行っていく予定である。特に、pH変化による反応プロセスの変化は、実触媒を考える上でも重要である。これまでも、水の分解反応に限らず光触媒反応一般に、その活性が溶液のpHに強く依存することは知られていた。しかし、その多くはpH変化によってTiO2電極側のフラットバンドが変化することで説明されている。しかし、もともとpHが変化するということは、TiO2表面の化学状態が変化することであり、”表面局所構造”が変化することに他ならない。フラットバンド電位の変化も、この表面局所構造変化が原因となるものではあるが、これまでの我々の結果(反応モデル)からは、4つの競争反応の比やプロセス自体に大きな影響を与える。そこで、今後は、4つの競争反応過程それぞれが、溶液のpHを変えることによってどのように変化するか、互いの相関性についても注目しながら調べていく予定である。むろん、pH変化において、溶液側の化学組成変化にも注意しなければならない。これら、界面がpHによってどのように変化していくか、複合的な視点から調べていく。
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Research Products
(16 results)