2012 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液中の酸化チタン単結晶表面における光生成ホール消費プロセスの表面構造依存性
Project/Area Number |
23350065
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今西 哲士 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60304036)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光触媒 / 酸化チタン / 単結晶 / 水分解 |
Research Abstract |
水溶液中のルチル型TiO2単結晶表面状における酸素発生、発光、表面エッチング、無輻射失活の4つの競争反応の表面構造に対する影響を明らかにするための実験を行った。実験は、0.1M HClO4、およびこれにNaOHを混ぜた溶液中でTiO2基板に水銀灯とバンドパスフィルターを使って紫外線照射、電位印可して行った。 本年度は、前年度続きの実験を行ったと共に、4つの反応パスが水溶液のpHにどのような影響を受けるか調べた。水溶液中のpHを変化させることによって結晶の最表面の表面水酸基の状態(電荷)を変化さた。これによるホールの消費パスがどのように変わるかを調べた。その結果、アルカリ溶液中での発光強度は酸性に比べて非常に弱くなることが分かった。丁度、pzcあたりで強度が急激に変わることから、これは表面電荷の影響により、ホールの反応パスが変わったことを意味するものと思われる。酸性側では表面電荷が正のために、ホールが最表面にある酸素発生サイトに近づけず、発光サイトである3配位酸素に留まった結果、強度が強くなったものと推測される。一方、アルカリ中では、表面電荷が負のために多くのホールが酸素発生サイトで消費され、発光が弱くなったものと思われる。一方、酸性中とアルカリ中でラフニング速度の観測を行ったところ、酸性中の方が、ラフニング反応の効率(ホールの消費割合)が高いことが分かった。ラフニング反応は、酸素発生反応過程の途中で起きることから、このことは、pHを変化させることによって、酸素発生効率が変化するだけでなく、酸素発生サイト(メカニズム)も変わる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究により、酸性溶液中におけるstep-terrace構造が4つの競争反応(発光、ラフニング、無輻射失活、酸素発生)に与える影響は、明らかになった。特に、ラフニング反応と発光反応、無輻射失活反応が、step密度やstep端の結晶構造(step方位)に予想以上に大きな影響を受けることが明らかになったのは、大きな意味がある。これは同時に、酸素発生反応もstep-terrace構造など、原子レベルの表面局所構造に強く依存することを意味する。通常、単結晶のみならず微粒子上のファセット面においても、こうした一種の局所構造欠陥が多く存在することが知られている。本研究の結果は、こうした構造が光触媒活性に大きな影響を与えることを示す始めての事例であり、本成果は学術的な面だけでなく、応用的な面においても非常に大きな意味がある。一方、pH変化の実験については、発光やラフニング反応の違いなど非常に興味深いデータが得られた。発光強度などがある程度pH依存性を示すであろうことは、我々の仮説からはある程度事前に予想していたことではるが、今回の結果によって、我々の反応モデルの一部が実験的に証明されたことは意義深いと言える。ただし、stepやterraceの局所構造を変化させた際の実験データがまだ不十分であり、今後ペースを速めて実験を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、表面局所構造や面指数の異なる単結晶面を用いて実験を行っていく。本年度、新たに明らかになった、4つの競争反応のpH依存性の結果は非常に興味深い。これらの実験をさらに、step-terrace構造を制御した単結晶を用いて行い、表面局所構造の違いによるpH依存性の違いも明らかにしていく予定である。これまで、溶液のpHによって酸素発生効率が変化することは知られていたが、それらはすべてフラットバンド準位のシフト(要は、酸化チタンと溶液側との間での電子(ホール)授受効率)によって説明されてきた。ところが、本実験の結果は、単純な電子移動論だけでなく、そもそもホールの消費過程を含めた酸素発生反応のメカニズムが変化していることを示唆している。このことは、これまで誰も指摘してこなかった点であり、今後は、ホール消費過程のpH依存性を更に詳細に調べていく予定である。一方、光エッチングなどを利用して、複数面を共存させた試料を用いた実験も精力的に進めていく。この実験は、面内に出来た表面ポテンシャルの差が、ホール消費過程にどのように影響するかを見る上で非常に重要である。これらの実験を平行して進めていくことによって、4つのホール消費過程と表面構造との関連性を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(17 results)