2012 Fiscal Year Annual Research Report
モジュール型分子設計を駆使するπ電子系化合物の配列多様性とそのヘテロ接合体の創出
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23350070
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
新海 征治 崇城大学, 工学部, 教授 (20038045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田丸 俊一 崇城大学, 工学部, 准教授 (10454951)
土屋 陽一 公益財団法人九州先端科学技術研究所, ナノテク研究室, 研究員 (10517212)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 多糖 / 有機半導体 / 刺激応答 / 自己組織化 |
Research Abstract |
我々のグループは“低分子有機ゲル”に関する研究を通して、糖、アミノ酸、尿素、核酸などの分子間相互作用を利用して、多種多様な分子配列様式を創出する豊富なノウ・ハウを蓄積して来た。これらの[構造形成部位]に関する知識を活用すれば[π電子系化合物]-[刺激応答部位]-[構造形成部位]の構成からなるモジュール方式を採用することにより、多様なπ電子系化合物の配列が実現できることに気付いた。[刺激応答部位]は配列完了後に、不要部位の切断除去や後重合による安定化に利用する機能性部位である。本研究の第一目的は、これまで極めて困難とされたπ電子系化合物の配列制御を実現することである。第二目的としては、創製されたπ電子集積体を共役系高分子等と複合化することにより、“ヘテロ接合体”を創出し、効率の良い有機ELや有機太陽電池の実現に供することである。 今年度は有機半導体開発における重要課題であるπ電子系化合物の結晶化に関する新しい知見を得た。ポルフィリンのシクロデキストリン包摂錯体の単結晶の調整に成功し、その構造特性と光化学特性を評価した。この結晶中でポルフィリンはモノマー的に存在するものの、それぞれの分子間距離が近いため、効率的にエネルギー移動を起こす事が可能であった。興味深いことに、この単結晶の発光特性には角度依存性が観測された。 また、ポルフィリン誘導体とビオロゲン誘導体をモノマーとしてクリック反応を油水界面で進行させたところ、そのモノマー形状が反映されままµmサイズまで成長した正方形あるいは長方形の高分子膜の形成が確認された。この膜の中ではポルフィリン・ビオロゲン間の電荷移動錯体の形成が示唆された。モノマーをビオロゲンから電荷移動錯体を形成しないビフェニル型へと変更したところ、数nm~十数nm程度の膜厚を持ちながらcmスケールに至るほどの面積を持つ二次元高分子の創製に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機半導体開発において重要課題である、π電子系化合物の結晶化に関して有益な知見を得た。特にπ電子系化合物のシクロデキストリン包摂錯体の単結晶の調製は難しいが、本研究によりその手法を確立することに成功した。以上の成果はπ電子系化合物が単分子状態で示す光化学・電気化学的特性を保持した結晶性材料の開発を実現するために極めて重要な発見である。また、本研究では得られた包摂錯体結晶が角度依存的な発光特性を示すことが明らかとなり、包摂錯体結晶が示す特徴を明らかにすることに成功している。また、油水界面でのHuisgen環化反応により得られた高分子二次元膜は、規則性構造を持つ特異な正方形あるいは長方形の高分子膜の形成を確認した。この高分子二次元膜は電子ドナーとアクセプターからなり、構造内部で効果的かつ多点的に電荷移動錯体を形成した高分子膜であることが確認された。以上は本研究の目的である効果的なヘテロ接合体の開発に重要な知見である。 以上のように、平成24年度は超分子化学的戦略に基づくヘテロ接合体の開発に有益な、新しい知見を得ることができ、3年間の採択期間の初年度として十分な成果を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに開発した包摂錯体の単結晶については、ホスト、およびゲスト分子を多様化することで、今までに無い有機結晶が示す新しい性質に関する知見を蓄積する上で極めて有用である、そこでこれまでに開発した包摂錯体結晶の電気・光化学特性をサイクリックボルタンメトリーや各種分光化学的手法明らかにし、顕微鏡的手法から得られる構造情報との相関を考察することで、ヘテロ接合構築に有効な分子集積化手法についての知見を蓄積する。さらに、様々なホスト・ゲスト錯体の単結晶を調製し、それらの性質についても同様に評価する。以上の検討から得られる知見を元に、更に刺激応答部位を盛り込んだ、更に高度な分子を合成しこの自己組織化挙動について検討する。得られる自己組織体の刺激応答性と電気化学的の相関を調査する。 一方、界面重合反応から得られた高分子二次元膜に関しても、その電気・光化学特性をより詳細に検討する。更に、化学特性や構造特性が異なる様々なモノマー分子を、π電子系分子を中心に調製し、ヘテロ接合を実現する高分子膜の創製に挑む。
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