2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイック鉄酸化物電子強誘電体の応用へ向けた新規相探索
Project/Area Number |
23350071
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
吉井 賢資 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (90354985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 寛之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究職 (20373243)
池田 直 岡山大学, 理学部, 教授 (00222894)
松村 大樹 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 任期付研究員 (30425566)
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Keywords | マルチフェロイック / 鉄酸化物 / 室温動作素子 / 高圧合成 / 放射光 |
Research Abstract |
電子強誘電体RFe_2O_4(R=Y,Ho-Lu)につき、希土類(R)サイトをイオン半径の大きい希土類イオン(R^<3+>=Gd^<3+>,Tb^<3+>,Dy^<3+>)で置換し、新規相を合成することを試みた。常圧で1200℃近辺において多結晶試料合成を行ったところ、上記希土類が10%ほど置換したという結果を放射光吸収分光測定(広域X線吸収微細構造)により得た。これら試料を実験室系X線回折で観測したところ、微量の不純物が含まれていることが分かったため、純良な試料を合成するため合成実験を継続中である。 また、研究目的の一つである、物理的・化学的圧力によりRFe_2O_4の物性を制御する試みについて、R=Y,Er-Lu,Inに対し、交換バイアスの結果をJ.Phys.Soc.Jpn.誌に発表した。交換バイアス効果は、磁化の方向を安定化させることができることから、応用面から重要な物性である。本系においては、全てのRイオンに対して交換バイアス効果が約100K以下で観測されたが、R^<3+>イオンを小さくする(=希土類を重くする)ほど、交換バイアス効果は増強されることを報告した。この結果は、RFe_2O_4系においてRを置換し、化学的圧力を変化させることによって系統的かつ応用的に重要な物性変化を観測した最初の報告例と考えられる。なお、ここから派生した研究として、ペロブスカイトLa_<1-x>Pr_xCrO_3において、200K以下で特異な交換バイアス効果を見出しAppl.Phys.Lett.誌に報告した。この系は10年ほど前に、研究代表者が異常な負の磁化を報告したものであり、基礎的にも応用的にも興味深い系である。 さらに、RFe_2O_4のFeサイト置換系や一般的なイオン変位型誘電体の研究も行い、Jpn.J.Appl.Phys.誌などに7報の論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RFe_2O_4の希土類(R)サイトにイオン半径の大きい希土類イオンを置換するという最大の研究目的は、一部置換ではあるが成功しつつある。また、他の研究目的である、物理的あるいは化学的圧力により物性をコントロールするという試みは、交換バイアスの希土類依存性で観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述通り、RFe_2O_4のRサイトの10%程度の一部置換は達成されているが、今後、さらに置換量を増やす合成実験を常圧下で行う。さらに、単相にならない試料に圧力を印加し、単相になるか否か観測する。これらと並行し、非平衡手段である薄膜作成法(パルスレーザー体積法)によって大きな希土類イオンを含むRFe_2O_4が単相で合成できるかどうか探る。良質な試料ができれば物性測定を行い、本研究の目的である、室温での磁気転移が起こるかを観測する。さらに、物性を物理的にコントロールできる可能性を探るため、本年度購入した高圧セルで試料に圧力を印加し、磁性や誘電性などの物性を測定する。
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Research Products
(14 results)