| Research Abstract |
ここ数年,スピントロニクスおよびその関連分野の研究に大きな関心と期待が寄せられている。材料面では,磁性金属に加え,強磁性を示す酸化物や半導体が設計・開発され,演算素子への展開が期待されている。一方,有機材料のスピントロニクスへの応用も注目を集めている。長距離のスピン輸送能が期待されることに加え,簡便な方法で,回路の描画ができることも期待を膨らませている。本研究では,強磁性電極と有機物のサンドイッチ構造を作製し,界面の構造を制御することにより,有機材料へのスピン注入の確証を得て,有機材料の個性を生かしたスピントロニクス素子の設計指針を導出する。スピン拡散長などの基礎データを集積するとともに,スピン輸送特性を制御して、室温で動作するフレキシブルな素子やスピンFETなどのスイッチング素子を作製する。
本年度は,積層型素子に関しては,ホイスラー合金であるCo2MnSiのエピタキシャル膜の作製を行った。MgOを基板とし,成膜条件を最適化することにより,X線回折および磁化測定により,強磁性特性を確認した。これを電極として有機スピンバルブの作製を行い,室温で安定した動作を確認した。また,横型素子においては,分子性金属単結晶を育成して試料とし,電子ビームリソグラフィーにより数百nm程度の間隔を持つNi電極を作製し,非局所でのスピンバルブ特性の計測を行い,スピン拡散長に関する知見を得ることに成功した。
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