2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23350091
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
夛田 博一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40216974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川椙 義高 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (40590964)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機スピントロニクス / 磁気抵抗効果 / スピンバルブ |
Research Abstract |
炭素や酸素などの軽元素で構成される有機材料は、スピン軌道相互作用が小さくスピン輸送能力が高いと期待されていることから、有機層を強磁性電極で挟んだスピンバルブ構造の作製とその磁気抵抗効果の計測を行う研究が活発に行われている。多くの有機スピンバルブ素子では、ハーフメタルとして知られているLa0.7Sr0.3MnO3 (LSMO)が用いられ、低温で数十%の磁気抵抗効果が観測されている。しかし、そのキュリー点は350K 程度であるため、室温における素子の磁気抵抗効果は1%程度と小さいものしか報告されていない。そこで、本研究では985K のキュリー点を持つホイスラー合金Co2MnSi (CMS)を強磁性体電極に用いた有機スピンバルブ素子を作製し、室温における磁気抵抗効果を調べた。 CMS は、パルスレーザー堆積法 (PLD 法) を用いて、Cr/MgO 基板上に成膜した。ホイスラー合金のスピン分極率は、原子配列の乱れによって影響を受けることが知られているが、作製したCMS 薄膜をRHEEDとX 線回折で評価したところ、規則度の高いL21 構造を示す結果が得られた。これを下部の強磁性電極に用い、その上に有機層としてTPD (N,N’-Bis(3-methylphenyl)-N,N’-bis(phenyl)-benxidine)、上部の強磁性体電極としてCo を真空蒸着して積層型素子 を作製し、磁気抵抗効果の測定を行った。外部磁場によって2つの強磁性体電極の磁化の向きを変化させると、それに対応したスピンバルブ効果が低温から室温まで観測された。室温では約7.3%の磁気抵抗効果が観測され、これはこれまでに報告されている有機スピンバルブ素子の中で室温では最も高い磁気抵抗比である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
積層型の有機スピンバルブの作製手法および計測手法は確立し、データーの集積をはかることが可能となった。室温での動作確認のための手法もほぼ確立している。非局所測定によるスピン流の計測方法も確立し、有機材料へのスピン注入および輸送過程を詳細に調べる準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、非局所測定法により有機単結晶のスピン拡散長の計測手法を確立した。電子ビームリソグラフィーおよび収束イオンビーム加工観察装置を利用し、電極のサイズや間隔を系統的に制御しスピン拡散長に与える影響を調べることにより、スピン注入の確証を得る。
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