2013 Fiscal Year Annual Research Report
原子価制御による機能性鉄チタン複合酸化物薄膜の開拓
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23350092
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤井 達生 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (10222259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 真 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10284085)
高田 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60093259)
市川 和典 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90509936)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | イルメナイト / エピタキシャル薄膜 / 酸化物磁性半導体 / ゲルマニウム置換 / 高圧合成 / メスバウアー分光 |
Research Abstract |
α-Fe2O3-FeTiO3固溶体薄膜を、RFマグネトロンスパッタ法により、α-Al2O3単結晶基板上に作製した。組成の異なる固溶体薄膜を作製するため、成膜ではα-FeとTi又はTiOの2種類のターゲットによる2元同時スパッタを用い、2基のターゲットの出力比を厳密に制御することで、薄膜のFe/Ti組成を制御した。使用した基板はα-Al2O3(001)および(110)であり、成膜時の基板温度は、500℃~800℃の範囲で変化させた。また成膜中はFe2+/Fe3+の混合原子価状態を制御するため、質量分析計でチャンバー内の酸素分圧を厳密に制御しながら微量の酸素ガスを導入した。作製した薄膜の膜厚は約50 nmであり、薄膜の固溶体組成はEDX分析により決定した。薄膜の評価として、結晶相およびその配向性の同定をXRD測定で行い、FIB加工後に微細構造をTEM観察した。また、磁化測定をVSM又はSQUID、さらに PPMSにより電気抵抗ならびにホール効果測定を実施した。 実験では、まず、n型相であるFe1.4Ti0.6O3及びp型相であるFe1.8Ti0.2O3の成膜条件の最適化と、その半導体物性(キャリア密度や移動度など)を重点的に評価した。その結果、成膜時の微妙な成膜条件のずれが薄膜の半導体物性に大きく影響することが判明した。また、これらn型相とp型相の二層からなるp/n積層膜の作製を試みた。 さらに、固溶体薄膜の合成に加え、FeTiO3のTiサイトを他の元素で置換した新規なイルメナイト型鉄酸化物の合成を行い、FeTiO3の磁気構造や電子状態を変化させ、あらたな機能性材料を導き出すことを目指した。その手始めとして、Tiサイトを同じ第4周期に属し、かつ4価のカチオン状態が安定なGeで置換したFeGeO3の高圧合成を実施し、メスバウアー分光法によりその電子状態と磁性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はスパッタ成膜装置がトラブルなく稼働したため、薄膜の試料作製が順調に進み、成膜条件の微妙な違いが薄膜の微細構造や半導体特性に与える影響を系統的に解明することができたため。また、高圧合成についても、合成手順を習熟することができ、物性評価に耐えうるだけの試料を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄チタン複合酸化物薄膜による先端機能デバイスの実現をめざし、エピタキシャル鉄チタン酸化物薄膜の成膜条件がキャリア密度や移動度などの電子輸送特性に及ぼす影響を明らかにする。また、p型およびn型のキャリアタイプを示すFe2-xTixO3薄膜を積層し、p/n接合特性を評価するとともに、その半導体特性を詳細に評価し、太陽電池や水の光分解等の光機能性材料への展開をこころみる。 くわえて、鉄チタン複合酸化物への元素置換を試み、それらの知見をもとに、薄膜の電気特性や磁気特性のさらなる改善をはかる。また同時に、自然界には存在しない組成、構造の複酸化物を、薄膜ならではの特徴であるエピタキシャル安定化を利用して実現し、磁性強誘電体や光誘起磁性体などのマルチフェロイック相実現の可能性を探索する。
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Research Products
(7 results)