2012 Fiscal Year Annual Research Report
立体配座制御に基づく高性能フォトクロミック化合物の創製
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23350096
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
横山 泰 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60134897)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / ジアリールエテン / ビスアリールインデノール / キラリティー / ジアステレオ選択性 / エナンチオ選択性 / ヒト血清アルブミン / 水素結合 |
Research Abstract |
①平成24年度には、平成23年度に得られた、水素結合を利用して反応の立体配座を制御できる、ジアステレオ選択性100%、環化量子収率85%のビスアリールインデノールについて論文発表した。この化合物は、無極性溶媒であるヘキサン中でジアステレオ選択性、環化量子収率が高い値を示す。極性溶媒中では水素結合が阻害され、立体配座の制御が強く働かなかった。このことを検証するために、水素結合を阻害する部位を持つビスアリールインデノールを合成し、ジアステレオ選択性と環化の量子収率が低下することを確認した。 ②水酸基と窒素原子による水素結合を複数持つ化合物の合成に着手した。これらの化合物では、立体配座の制御がより強く働き、極性溶媒中でも高いジアステレオ選択性と大きい環化量子収率が期待される。 ③平成23年度に、水酸基を二つ持つジアリールエテン(1)がヒト血清アルブミン中で63%のエナンチオマー過剰を示すこと、水酸基の位置が重要であること、水酸基を持たない化合物では(1)と逆の絶対立体配置の異性体を主に生成することを見つけたが、平成24年度には、温度を下げると(1)のエナンチオマー過剰が71%まで向上することを見つけた。また、化合物の構造を種々検討し、また媒体の組成を検討することにより、ヒト血清アルブミン中で80%のエナンチオマー過剰を示す反応系を見つけた。 ④平成25年度には、これら①②③の研究を継続するが、特に②と③について集中的に検討し、さらに高い立体選択性を示す化合物と媒体の組成を追求し、構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. 平成23年度中に、水素結合を利用して、ジアステレオ選択性100%、光反応量子収率85%、環化着色体への変換率98%という素晴らしい系を見つけることができた。 2. ヒト血清アルブミンを用いて、エナンチオマー過剰が23年度に63%、24年度に80%という高いエナンチオ選択性を示す系を構築できた。 3. 平成25年度には、媒体をさらに拡張して、DNAを用いる研究を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 複数の水素結合を利用して、さらに高性能のフォトクロミック化合物のシステムを構築する。 2. ヒト血清アルブミンを用いるエナンチオ選択的フォトクロミズムの系において、さらに高い選択性を追求する。 3. 用いる媒体をさらに拡張して、DNAによるエナンチオ選択的フォトクロミズムを示す系を探索する。
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