2011 Fiscal Year Annual Research Report
スーパーミクロポーラスシリカの細孔径制御とその細孔を利用した新機能性材料の創成
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23350102
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70255595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 洋人 東京都立産業技術研究センター, 研究員 (00500901)
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Keywords | 量子ドット / 多孔質体 / 光触媒 / サーモクロミズム / ナノ粒子 / サブナノ粒子 |
Research Abstract |
本年度は、量子ドット(QD)の鋳型として機能する、0.7~2.Onmの範囲で細孔径制御が可能なスーパーミクロポーラスシリカ(SMPS)の開発を試みた。無溶媒合成系を構築することで炭素鎖6以下の界面活性剤を用いたSMPS合成を達成し、反応温度、pH、界面活性剤添加量、等を制御し、0.5~3.0nmの範囲でÅ刻みの平均細孔径制御を可能にした。次に、このSMPS細孔をQD合成の鋳型に、種々の遷移金属酸化物のサブナノQDの合成を試みた。本年度は光触媒であるWO_3とCuOをモデル物質とした。WO_3の場合には、粒径を1.0nm以下にすることで量子サイズ効果が極めて顕著になることを明らかにした。バルクやナノ粒子のWO_3の場合、伝導帯準位が酸素分子の還元準位よりも低いため、電子を効率的に消費できず、触媒活性の低下の原因となる。一方、本研究で得られたサブナノWO_3の場合には酸素の還元が円滑に進行することが明らかになった。これは、1.0nm以下の粒径で現れる顕著な量子サイズ効果の結果である。このことは、サブナノメートルオーダーの粒子サイズ制御が、触媒効率や反応性の制御に有効であることを示している。CuOについても同様にシングル~サブナノ領域においてサイズ選択的なQD合成を達成した。また、CuO-QDは顕著なサーモクロミズムを示し、室温~500℃の温度範囲で、青、緑、黄色、茶色へと可逆的な色変化を示した。これは、CuO-QDの間接遷移型バンドギャップが温度の影響を強く受けることに起因する。本年度は、シングル~サブナノサイズのQDのサイズ選択的な合成に成功し、サブナノ領域で特異な性質が発現することを明らかにした。また、本年度確立したQD合成法は基本的に水溶液プロセスを応用したものであり、極めて広範囲の物質群に適応可能である。次年度ではさらに対象物質群を拡大し、研究を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多孔質シリカ合成に関しては、当初の計画の0.7~2.0nmの細孔径よりさらに小さな0.5nmまでの範囲でÅ単位の平均細孔径制御を可能にした。さらに、その細孔内で生成する量子ドットに関しても細孔径に対応したサイズのものが得られており、これまでになく高いサイズ選択性でのサブナノドットの作成が達成された。さらに、2年目以降の検討事項であった新規機能性発現についての知見もいくつか得られており、対象化合物群の拡大と、さらなる機能性の探究に向けた指針を得ることができたため、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、対象化合物を遷移金属およびその酸化物全域に拡大し、サブナノドットの特異的機能性を探究する。今年度得られたWO_3とCuOについては、その触媒活性やサーモクロミズム等のサイズ依存性の詳細な検討を行う。CuOに関してはナノ粒子化により-100℃以下で負の膨張率を示すことが報告されている。そこで、我々の合成したサブナノCuOに関して、バンドギャップの低温領域での温度依存性を詳細に検討し、電子-フォノンカップリングと粒子熱膨張とが競合する系についての新たな知見を得る。また、有機物の内包効果についても本年度に予備的に始めているが、今後は細孔内での自由回転C-C結合で結ばれたπ電子平面の挙動や電荷移動相互作用について具体的な対象化合物を絞り込み、サブナノ細孔内での有機物の特異的挙動を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(3 results)