2011 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性DLCナノ薄膜を利用する創エネルギー技術の開拓
Project/Area Number |
23350105
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
一ノ瀬 泉 独立行政法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, ユニット長 (50243910)
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Keywords | DLC / ナノストランド / 分離材料 / ナノ薄膜 / 浸透圧発電 |
Research Abstract |
本研究では、有効膜厚が数nmから数10nmである多孔性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を創製し、その細孔径をサブナノメートル精度で制御するとともに、内部の親/疎水性を有機化学的に変換する技術を開発する。さらに、最先端の構造解析技術ならびに液体の分子運動論に立脚し、多孔性ナノ薄膜を介した水/有機溶媒の透過機構を解明する。これにより、(1)数100GPaの弾性率を有し、水が高速で透過する自立型正浸透膜(FO膜)を設計し、今世紀のエネルギー問題の解決に寄与する「浸透圧発電用DLC膜」を開発する。また、(2)超撥水性の多孔性DLC膜を設計することで、バイオマスエタノール等の効率的な選択透過膜を実現し、ナノ分離膜による新しい創エネルギー技術を開拓することを目的とする。 23年度は、気化チャンバーを取り付けたプラズマCVD装置を利用して、元素組成や架橋密度、sp2/sp3炭素の比率が制御されたDLCナノ薄膜の製造を検討した。アセチレンを用いた場合、ヤング率(弾性率)が170GPa程度のDLC膜が得られた。また、原料ガスを選択することで、窒素や硅素、酸素を含んだDLC膜を製造することに成功し、膜の親/疎水性を制御できることが分かった。これらの膜は、有機溶媒を高速で透過させ、その透過速度は、有機溶媒の粘性に反比例して大きくなる。一方、水では、粘度から予想される透過速度よりも小さく、膜の内部は比較的疎水性であることが推測された。内部の細孔を親水化するために、化学的な酸化を試みたが、現状では、接触角を大幅に低下させることに成功していない。浸透圧発電用DLC膜の製造には、内部の孔径を現状の1nmから0.5nm程度まで小さくする必要がある。また、現行のプラズマCVD法では、DLC膜に内部応用が残り、引っ張りに弱く、基板の選択に制限があることが分かった。これらの問題は、24年度以降の研究により解決されることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高強度で有機溶媒耐性のナノ多孔性のDLC膜が開発され、実用化への検討が進められている。これは、当初の計画以上の進展であり、オイルを浄化する濾過フィルターとしての活用が期待できる。一方、浸透圧発電に利用するには細孔径を0.5nm程度にする必要があるが、現在の膜の細孔径は約1nmとなっている。今後は、孔径を小さくする手法として、プラズマ蒸着だけでなく、ポリアクリロニトリル膜の炭化を同時に検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
製膜条件を変えることで、塩の阻止率が70%程度まで出ているが、現状では流束が十分ではい。微細な穴の形成には、膜を形成するカーボンのドメインを小さくする必要があり、試行錯誤を繰り返している。1nm程度の炭素クラスターを解析できる高度な計測技術が開発されることが望まれる。
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Research Products
(4 results)