2012 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性DLCナノ薄膜を利用する創エネルギー技術の開拓
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23350105
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
一ノ瀬 泉 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (50243910)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DLC / ナノストランド / 分離材料 / ナノ薄膜 / 浸透圧発電 |
Research Abstract |
本研究では、有効膜厚が数nmから数10 nmである多孔性DLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を創製し、その細孔径をサブナノメートル精度で制御するとともに、内部の親/疎水性を有機化学的に変換する技術を開発する。さらに、最先端の構造解析技術ならびに液体の分子運動論に立脚し、多孔性ナノ薄膜を介した水/有機溶媒の透過機構を解明する。これにより、(1)数100 GPaの弾性率を有し、水が高速で透過する自立型正浸透膜(FO膜)を設計し、今世紀のエネルギー問題の解決に寄与する「浸透圧発電用DLC膜」を開発する。また、(2)超撥水性の多孔性DLC膜を設計することで、バイオマスエタノール等の効率的な選択透過膜を実現し、ナノ分離膜による新しい創エネルギー技術を開拓することを目的とする。 24年度は、将来の量産化における歩留まりを向上させるために、様々な基板の上に、プラズマCVD装置を利用して多孔性DLC膜を製造し、その性能を評価した。特に、DLC膜では、基板の欠陥が濾過性能に大きく影響するため、分光学的な手法により、基板の品質を確認する方法を開発した。また、量産化では、膜の大面積化が課題となるため、300mm×300mmの加圧式濾過装置を製作し、多孔性DLC膜製造のための犠牲層となるナノストランドシートを大面積で形成できることを実証した。さらに、多孔性DLC膜の耐圧性を向上させるための基板の必要条件を明らかにした。浸透圧発電用DLC膜の製造には、内部の孔径を現状の1 nmから0.5 nm程度まで小さくする必要があるが、これは24年度においても成功していない。これまでの研究から、サブナノメートル精度の細孔径制御には、プラズマCVD装置の改良が必要であると考えられ、25年度での整備を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高強度で有機溶媒耐性のナノ多孔性DLC膜が開発され、日本の膜メーカーにおいて、実用化研究が進められている。特に、ナノ多孔性DLC膜は、資源開発におけるオイル等を含んだ排水(石油随伴水など)の処理に必要不可欠であり、産業界の期待が高まりつつある。一方、浸透圧発電への利用には、細孔径を0.5 nm程度にする必要があるが、DLC膜の細孔径は約1 nmとなっており、前年度からの進展がない。0.5 nmレベルの細孔径制御は、製膜条件を高度に制御する必要がある。このため、プラズマCVD装置の様々な改良を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、特定の製膜条件で、塩の阻止率が70%程度のDLC膜が得られているが、現状では流束の大きな向上が見られない。サブナノメートルの細孔の形成には、膜を構成するDLCクラスターのサイズを小さくする必要があり、この目標に向けて試行錯誤を繰り返している。一方、本研究の期間内で実用化に繋がる成果を上げることも重要であり、1 nm程度の細孔サイズの多孔性DLC膜の将来の量産化に向けた基盤研究も進めている。
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Research Products
(5 results)