2012 Fiscal Year Annual Research Report
気-液界面を起点として合成されるゼオライトAFIの配向自立膜
Project/Area Number |
23350107
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小平 哲也 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (40356994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 拓史 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (60371019)
阪本 康弘 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (10548580)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 自立膜 / 多孔質結晶 / 界面現象 / 自己組織化 / 機能化膜 / 配向膜 |
Research Abstract |
本年度は,水熱合成反応その場観察装置の本格的稼働直前の装置特性の評価・予備実験を実施した。これに付随して,水熱反応装置に関する特許1件を出願した。予備実験から予想外の現象も見出し,更なる装置改良の必要性が判明したが,逆に水熱反応の本質的特徴を垣間見ることができた。具体的には,合成反応温度での溶液固化(粘度の上昇)が挙げられ,合成溶液が高温ではチクソ性の高いゲル状態になり,均一な加熱が困難になる事が明らかとなった。この不均一加熱の回避を年度末から着手した。このほか,本質的現象として,反応過程における溶液の液相分離現象などの知見を得,この液相分離界面にて自立膜が形成されることを観察できた。これに関しては,学会発表を複数行った。 これと並行し,膜利用技術の開発にも着手し,光機能性分子の一種であるアントラセンを自立膜の一次元ナノ細孔に導入することに成功した。また,UV照射により肉眼観察できる程度の発光を有することも確認し,蛍光分光測定法による光機能性評価への一定の足がかりを得た。そこで,蛍光分光光度計を薄膜材料に適用できるよう,更には,配向自立膜と特徴を踏まえ,偏光測定も可能な光路へ改造途中である。 さて,主となる自立膜合成に関連して,合成パラメータ(組成比,温度,時間等)の制御と得られる物質の相関を調査する過程で,新たなアルミノリン酸塩結晶相を発見した。そしてそれは層状物質であることを明らかにした。この新物質に関しては論文1報,また学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
合成反応その場観察装置は,上述したように,当初予見できなかった合成反応温度における溶液の高粘性化が生じていることが見いだされた。この現象により,溶液は対流が難しくなり,均一な加熱が困難となる。僅かに相対的に高温となった部分から溶液の沸騰が発生し,研究実績の概要に記した,溶液の相分離による界面が沸騰により攪乱されてしまう。これを新手法を用いた反応装置に改良するためのアイディア発案に時間を要したことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)自立膜形成過程のその場観察:上述の様に,静置状態における反応溶液の均一加熱を実現させることを最優先課題とする。これらの問題を克服するため,2年目末に行った装置改造(特許化検討中)を更に進め,合成過程の全貌を明らかにする。 2)自立膜の特性評価と機能付与:上述のように,機能性分子の自立膜の一次元ナノ細孔に導入することで配向 制御,更には機能制御が期待できる。偏光励起光による膜材料に対する蛍光分光法(装置)を完全に立ち上げ,分子配向を蛍光スペクトルにより検証する。分子配向方向が膜に対して垂直であれば,疎水性-親 水性(両親媒性)分子膜を形成するLB(Langmuir-Blodgett)法の他に,単なる疎水性または親水性の分子でも基板・膜に対して垂直配向制御できる,新たな方法を提供できることになる。 3)自立膜の透明化・高強度化:残り1年で完了できるか不明であるが,自立膜が不得意とする機械的強度を上げること,及び光学基板のような働きを持たせる為の,より高い透明性を付与することを時間の許す限りチャレ ンジする。具体的には,post-synthesis(再合成処理)により,自立膜表面の配向結晶の隙間を新たなAFI結晶により埋め,膜厚を増しつつも連続膜とすることで,機械的強度と光散乱抑制による透明性の向上を図る。
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