2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分子鎖の絡み合いを基点とした高次構造形成と機能発現
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23350109
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上原 宏樹 群馬大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70292620)
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Keywords | 分子鎖絡み合い / 結晶化 / ポリエチレン / 超高分子量 / ナノポーラス膜 / 薄膜 / 溶融延伸 / 医用材料 |
Research Abstract |
超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)はその高い機械強度および優れた生体適合性から、人工関節等の医用材料として用いられているが、溶融粘度が高いために膜状に成形するのは難しく、焼結したブロック状の躯体からかつら剥きの要領でフィルムを削り出すスカイブ法によって製膜されている。しかしながら、この方法では原理的に100ミクロン程度までの薄肉化が限界である。 また、UHMW-PEにあらかじめベンゼン・トルエン等の有機澱を含浸後、これら有機溶媒を揮発除去することによって微多孔膜が製造され、リチウムイオン電池セパレーターとして広く用いられているが、これらの有機溶媒は発ガン性物質として知られており、生産現場での製造従事者への健康被害が懸念されるとともに、それらが大気中に排出されることによって発生する環境負荷が問題となっている。 本研究では、UHMW-PEの高い溶融粘度を逆に利用して、溶融状態から延伸を行う溶融延伸法により、ナノ規則構造を有するUHMW-PE薄膜を創製することに成功した。この際、本研究代表者らが開発したインプロセス計測技術を元に、UHMW-PEの溶融延伸と収縮処理の組み合わせを最適化することで、分子鎖絡み合い位置分布の規則配列化を達成した。 さらに、このナノ規則構造膜に対して、結晶/非晶間の物理的剥離によるナノポーラス化処理を行ったところ、有機溶媒を一切用いることなく、ナノメートル・レベルの連通細孔がネットワーク上に広がったナノポーラス膜を得ることに成功した。 このようなナノ規則構造あるいはナノポーラス構造はブロック共重合体で得られるミクロ相分離構造に類似しており、今回、分子鎖絡み合いを結晶化の基点どして利用することで、UHMW-PEのような単独重合体であってもこれらナノ構造を有する大面積膜を創製することができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られたナノ規則構造膜はラメラ結晶のネットワーク構造に起因して、厚さ数ミクロンの超薄膜でありながら、厚さ500ミクロンのスカイブフィルム(従来品)と同等の優れたガスバリア性能を示した。一方、このナノ規則構造を元に製造したナノポーラス膜は、従来のリチウムイオン電池セパレーターと比べて細孔サイズが十分の1程度(数十nm)であるにも関わらず、良好な連通性を有していた。
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Strategy for Future Research Activity |
UHMW-PEは高強度であるため高圧印加することが可能であり、水質浄化用ろ過膜等の環境保全材料や人工透析膜等の医用材料としても活用できると期待される。現在、関連メーカーとの共同技術開発を計画している。
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