2012 Fiscal Year Annual Research Report
高分子鎖の絡み合いを基点とした高次構造形成と機能発現
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23350109
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上原 宏樹 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70292620)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子鎖絡み合い / 結晶化 / ポリエチレン / 超高分子量 / ナノポーラス膜 / 薄膜 / 溶融延伸 / 医用材料 |
Research Abstract |
ポリエチレンに代表される結晶性高分子材料は、結晶相と非晶相がnmオーダーで組み合わさった高次構造を形成するが、これらをブロック共重合体のように規則配列化することは難しい。しかしながら、結晶相/非晶相・界面には分子鎖「絡み合い」がトラップされていることが示唆されており、これはブロック共重合体のミクロ相分離界面にセグメント「接合点」が並ぶことと酷似している。本研究では、分子鎖絡み合いを多く含む超高分子量樹脂を対象として、これを溶融延伸する過程における「分子鎖絡み合いの位置分布」をインプロセス計測によって評価し、冷却結晶化に際して「分子鎖絡み合いを基点とした構造形成」が起こるかを検証した。また、この成形法により得られるナノ規則構造の機能発現についても検討を行った。 まず、成形膜中でナノ規則構造を得るための最適条件を決定した。また、得られたナノ規則構造薄膜について、実用的な膜物性である力学物性(引張り・引き裂き強度)、ガスバリア性能、透明性、撥水性等を測定し、従来のスカイブ法で成形された既存の超高分子量ポリエチレン膜(最薄でも100ミクロン厚)との比較を行い、本研究の構造制御手法の優位性を確認した。 さらに、これらナノ規則構造薄膜に対して、ラメラ剥離条件(再延伸温度、速度、歪み)が細孔特性(サイズ、分布)に与える効果を検討した。得られたナノポーラス膜の細孔構造については、SEMおよびSPMによる形態観察を行った。また、細孔が膜面を貫通していることを確認するため、ガス透過率測定を行った。さらに、細孔密度およびサイズ分布をX線散乱測定および水銀注入測定により見積もった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
得られた多孔質膜は空隙率が市販のリチウムイオン電池用UHMW-PEセパレーターと同程度であるにもかかわらず、強度に優れるため、高圧を印加することが可能である。このため、迅速ろ過が望まれる人工透析膜や高強度が求められる人工血管等の医用材料への適用も有望視されている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、国内企業数社と技術移転に関する接触を行っており、リチウムイオン電池用セパレーター膜あるいは人工透析膜としての展開に向けて、多孔質膜の大型化(A4サイズ)が完成しつつある。
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