2012 Fiscal Year Annual Research Report
導電性高分子ナノファイバーを用いた熱電変換マイクロモジュールの開発
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23350111
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
下村 武史 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40292768)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / 有機導体 / 導電性高分子 / 熱電変換 |
Research Abstract |
PATナノファイバー素子のドーピングと熱電変換効果の評価 本年度はドーピング濃度と熱電変換効果の関係を検証した。PATナノファイバー薄膜の両端に白金電極をつけ、ドーピング濃度を変えながら、ゼーベック係数および導電率の評価を行った。ドーピングは膜を塩化金溶液に含浸させる方法を用い、温度を変えながら測定を行った。その結果、ドーピング濃度を変化させたナノファイバーでは導電率とゼーベック係数にトレードオフの関係が確認され、理論と一致する結果となった。性能指標となるパワーファクター(PF)はナノファイバーで12.1nW m-1 K-2、ナノファイバー化していないフィルムで13.1nW m-1 K-2であり、両者に有意な差は見られなかった。 PATナノファイバーコンポジットフィルムのドーピングと熱電変換効果の評価 次に、ナノインプリントが可能なようにPMMA中にナノファイバーを包埋させての熱電特性を評価した。その結果、PFはナノファイバーで0.23nW m-1 K-2、フィルムで0.026nW m-1 K-2であった。これは薄膜上での表面粗さによる差がなくなり、ファイバーの高い結晶性による導電率の増加の寄与が大きくなったことによると考える。以上より、素子中での条件が同じであればファイバーの方がフィルムより優れた熱電性能を有することが示された。 PATナノファイバーコンポジットフィルムのナノインプリントアレイの作成 ナノファイバーのアレイ構造を形成するために、コンポジットフィルムのナノインプリントを行った。その結果、PMMAのガラス転移点よりも十分高い250度付近で転写を行うことで、約100nmレベルのアレイ構造が形成できることが確認された。また、この構造のもつ導電率を評価したところ、それぞれつながった素子部分は、バルクと同等以上の導電率を有することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、前年度、確立されたPATナノファイバー熱電変換素子をドーピングし、ナノファイバー化していないフィルムに対する優位性を示すとともに、そのコンポジットフィルムをナノインプリントによりパターン転写し、ナノファイバーアレイの作製と、その性能評価を行うことであった。 ナノファイバーの優位性の評価 当該年度の目的の一つは、前年度までに作成したPATナノファイバー素子がナノファイバー化していないフィルムよりも高い熱電変換効率を示すことを確認することであった。ナノファイバーのフィルムではその優位性を示すことができなかったが、コンポジットフィルムにおいては、ドーピングを施すことで、ナノファイバーがナノファイバー化していないフィルムよりも高い熱電変換効果を示すことが確認され、ナノファイバーの優位性を示すことができた。この点に関しては年度の目的を達成したと言える。今後は、素子の厚さなどまだ調査していないパラメータを変えながら、さらなる性能の向上を目指すことが求められる。 ナノファイバーアレイの作製 また、ナノファイバーコンポジットフィルムにナノインプリントを施し、ナノファイバーアレイを作成し、その性能を評価することが、当該年度の目的の一つである。ナノファイバーコンポジットフィルムのナノインプリントに成功し、目的の構造を転写できることを確認した。また、この構造が導電性を有しており、異方的に電荷を輸送できる目的にあったナノファイバーアレイであることが確認できた。以上から、目的はおおむね達成できたと言える。しかし、この構造の熱電変換効率を測定するまでには至らなかったため、その測定が積み残した課題である。 以上より、積み残した課題はあるものの、目的は達成されていると判断され、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにPATナノファイバー素子がナノファイバー化していない素子よりも高い熱電変換効率を示すことが確認され、ナノファイバー化の優位性を示すことができた。しかし、他の導電性高分子を用いた先行研究と比して、本素子の優位性が十分示されてはいない。そこで今後はさらなる性能向上を図るとともに、マイクロモジュールの作製を行う。 PATナノファイバー素子の熱電変換効率の向上 PATナノファイバー素子の性能にはこれまでに検討を行ってきたドーピング濃度に加えて、PAT含有率、素子の厚さなどが影響することがわかってきた。実際にPATナノファイバーのみからなる薄膜では比較的高い効率を得ることができている。そこでH25年度はこれまでに検討してこなかったPAT含有率、素子の厚さを変えながら、熱電変換効率の向上を行う。測定は前年度までに開発したシステムを用いて、同様な方法で行う。 マイクロモジュールの作製 これまでに作製したp型ナノファイバー素子にn型ナノファイバー素子を貼り合わせ、アレイ型のマイクロモジュールを作製する。現有の長焦点距離のデジタルマイクロスコープでおおよその位置を確認しながら、量産可能なナノインプリントの特徴を生かし、トライ&エラーで両者のパットが合うように貼り合わせる。完成したマイクロモジュールの熱電変換特性をPATナノファイバーアレイのときと同様にして、ヒーター付熱ブロックでナノファイバーアレイの片端を加熱し、ナノボルトメータにて起電力を測定し、その無次元性能指数ZT を既存のデバイスと比較し、実用性を評価する。
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