2012 Fiscal Year Annual Research Report
InGaAs系量子井戸におけるメゾスコピック・スピン輸送効果の検証
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23360001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古賀 貴亮 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30374614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 史郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (30356852)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 半導体スピン物性 / スピン軌道相互作用 / 半導体二重量子井戸 / ラシュバ効果 / ドレッセルハウス効果 |
Research Abstract |
(001)InP基板格子整合系In0.52Al0.48As/In0.53Ga0.47As/In0.52Al0.48As量子井戸(格子整合系)のスピン軌道相互作用(Rashba効果)係数を定量的に明らかにし、スピン自由度をメゾスコピック物理に応用することを目的に研究を進めました。格子整合系のRashba効果に関しては2011年発表の学術論文[Faniel et al., Phys. Rev. B]で定量的に明らかになりました。今年度進めた2重量子井戸を用いた実験でも、この論文で発表したRashba効果に関する物性定数は、定量的に正しいものであることが証明されました。 交付申請書で目的として掲げた「量子井戸の格子歪の効果、組成変化の効果の検証」に関しては、今年度は、実験に必要なエピ成長基板を入手するところまで研究が進みましたが、デバイス作製と測定に関しては平成25年度に持ち越しとなりました。 もう一つの目的であった「Rashbaのスピン軌道場が対向している2重量子井戸系でのスピンフィルタ効果の検証」に関しては、現在、異なるドーピング濃度で準備したいくつかのエピ成長基板に関してホールバーデバイスを作製し、2重量子井戸系の基礎物性を測定しています。基礎物性の測定や解析、解釈/考察は平成25年度も引き続き行う必要があり、スピンフィルター効果の検証に関しては、その後の課題となります。また、神戸大学と共同で、スピンフィルタデバイスの理論提案を行い、論文原稿を執筆しました。(平成25年度投稿予定)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の大きな目的である二重量子井戸を使ったスピンフィルタデバイスの作製に関して、原理を説明した学術論文がほぼ完成する段階であることと、デバイス作製用の二重量子井戸エピ成長基板についてほぼ設計どおりの物性が得られていることから、概ね順調に進展しているということが出来ます。また、もう一つのテーマであるメソスコピックループ配列構造でのスピン干渉効果に関しても、半古典論ビリヤード解析により準定量的に理解が進んでいることも、研究が順調に進展している根拠であると言えます。
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Strategy for Future Research Activity |
二重量子井戸を使ったスピンフィルタデバイスの作製/動作検証、メソスコピックループ配列構造でのスピン干渉効果の検証、両方のテーマに関して順調に研究が進んでいるといえます。そのため、このままのペースで研究を続けることにより、数年後には当初の目的を達成することができます。また、ラシュバ効果のある二重量子井戸系はこれまでにない新規の物理系を提供するものであり、研究の発展性に優れています。そのため、当初の目的達成後に新たな目的を設定し新規の物理効果を探求していくことが可能です。
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