2012 Fiscal Year Annual Research Report
短ξ高温超伝導体における粒内・粒界の不可逆磁場決定因子の解明
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23360007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山 淳一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20251366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 明保 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20581995)
岸尾 光二 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50143392)
荻野 拓 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70359545)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導体 / 臨界電流特性 / 結晶粒界 / 不可逆磁場 / 化学組成 |
Research Abstract |
本研究課題では、多結晶高温超伝導材料の特性改善に向けた有効な戦略の確立を目指し、高温超伝導体の結晶内、結晶粒界の臨界電流特性、特に磁場中における特性に強く関わる不可逆磁場特性の決定因子の解明を進めている。23年度の研究では銅酸化物高温超伝導体の焼結体試料に対する後熱処理およびキャリア濃度制御の結晶内、結晶粒界の臨界電流特性に与える影響を調べたほか、鉄系高温超伝導体の高純度多結晶体の作製にも着手し、さらに亜粒界を持つY123溶融凝固バルク体の臨界電流特性制御を試みた。24年度はこれらの研究を継続し、銅酸化物超伝導体Y123の無配向多結晶体では、23年度に達成した結晶粒間の臨界電流密度を6倍以上改善する手法を見出した。これには焼結、後熱処理過程の温度、酸素分圧の最適化のほか、原料であるY123粉末を高温焼成後にボールミル粉砕したものに代えた効果も表れている。つまり、大型結晶の破砕によって生じた清浄な表面を持つ微細な原料から焼結によって形成される粒界の性質が異なることがわかった。このような結晶粒界の臨界電流密度の改善と同時に粒界の不可逆磁場が大幅に改善し、62 Kでの不可逆磁場は従来法で作製されたY123焼結体の8 kOeから、同様な微細組織、空隙率であるにものの90 kOeに上昇した。これはこれまでの短ξである銅酸化物超伝導体特有の弱結合が焼結体の臨界電流特性を劣化させるという解釈に一石を投じる結果であり、非理想的な化学組成の大きな関与が示唆された。他のRE123焼結体や水銀系超伝導体においても同様な粒間結合の改善を進めたほか、鉄系超伝導体で最も高いTcを有する1111相ではFのアンダードープ状態において優れた粒間臨界電流特性が発現することを見出した。さらに任意の結合角を有するバイクリスタルY123溶融凝固バルクの作製にも成功し、粒界特性の定量的な評価を進める準備ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要の欄に記さなかったが、磁気光学測定の活用は十分にできておらず、また、単結晶を用いた接合の研究は順調に進んでいない。しかし、後者については溶融凝固バルクで任意の接合角を有する試料の作製に成功したことによってその代替試料が得られた。また、銅酸化物超伝導体の焼結体の粒界特性改善に極めて有効な還元ポストアニールプロセスを見出し、特に粒間の不可逆磁場を大きく向上させることができたことは、予想外の大きな進展であったといえる。さらに鉄系高温超伝導体についても多結晶試料の粒界特性改善に成功するなど、総合的に見ておおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は焼結体や溶融凝固バルク体試料を中心に粒間の臨界電流特性の改善を図りながら、短ξ高温超伝導体における粒内・粒界の臨界電流特性、特に粒界の不可逆磁場の決定因子を化学組成や結晶粒間の方位関係の観点から解明する。このために、微細組織観察、局所化学組成分析と磁気光学測定に注力していく。これらの研究を通じて、銅酸化物超伝導体と鉄系超伝導体の類似点、相違点を明らかにし、それぞれにおける高機能材料開発指針が提案できる成果の獲得を目指す。
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Research Products
(9 results)