2012 Fiscal Year Annual Research Report
高電場印加・温度可変環境下での強誘電体の静的・動的構造物性研究
Project/Area Number |
23360014
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒岩 芳弘 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40225280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森吉 千佳子 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00325143)
大沢 仁志 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00443549)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 誘電体物性 / 物性実験 / X線 / 電場 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究の目的は,高電場印加により大きく格子変形させた強誘電体の格子歪み,イオン変位,電子密度分布をその場観察し可視化するための実験要素技術の開発を行うことである.そのために,電場を印加することができ,温度変化させながら電場印加のタイミングに対して時分割X線回折実験を行うことのできるX線回折・誘電物性同時計測装置を製作する. 1年目の平成23年度に,透過能の高い銀の特性X線(波長:0.56 A)をX線源とし,試料印加電場および試料温度を精密に制御できる機能を備えたX線回折・誘電物性同時計測装置を広島大学に導入することができた.2年目の平成24年度に,この装置の試料軸(θ軸)の駆動をパルスモーター化し,自動かつ精密に試料の方位を変更できるように改造し,大学の研究室で電場印加下の回折実験を行うための実験装置の高度化を完了させた.この装置を用いたX線回折実験と放射光回折実験により,電子デバイスの中に組み込まれた強誘電体セラミックス材料の温度-電場相図を非破壊で決定することに成功した.また,強誘電体単結晶試料の様々な結晶方位に静的な高電場を印加した時に生じる構造歪みを調べ,これらの成果を国際会議および国内学会などで発表した. 一方,動的な性質については,1年目にSPring-8で立ち上げた時分割装置を用いて得られた研究成果をまとめた論文(Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 09NE05)が大変注目を浴び,第34回(2012年度)応用物理学会論文賞優秀論文賞を受賞した.この成果に係わる解説記事(放射光学会誌など)の執筆や基調講演(ISAF)ならびに招待講演(CIMTEC, Sagamore, 応用物理学会,セラミックス協会など)を行った.また,時間幅50psの放射光バルスを用いた時分割実験を行うための準備と予備測定を行い,時間分解によるデータ記録に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に広島大学に導入したX線回折・誘電物性同時計測装置を予定通りに高度化することができ,今後の研究基盤を構築することができた.一方,初年度にSPring-8で立ち上げた時分割構造計測システムによる研究成果で応用物理学会の論文賞を受賞することができた.また,研究発表の具体的な成果として〔雑誌論文〕や〔学会発表〕欄に記したように,多くの学術団体から解説記事の執筆や招待講演の依頼を受けた.3年度目に米国で開催される,アメリカ結晶学会からも招待講演の依頼や日本セラミック協会からの解説記事執筆依頼も受けている.これらのことは客観的評価として,我々の研究成果が,国内外の強誘電体の基礎・応用研究に係わるグループおよび放射光による構造計測技術に係わるグループから高く評価されたと考えられる.一方,静的な電場印加に係わる研究成果については国際会議などで報告したのみであり,論文として公表できていないので,おおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,大学に導入したX線回折・誘電物性同時計測装置やSPring-8において開発した時分割構造計測システムを用いて,電場印加下での結晶構造解析実験を精力的に行い,成果を研究論文として公表していく予定である.試料には,強誘電性を示す単結晶やセラミックスを用い,基本物性や相転移と結晶構造とを一対一に対応させたデータを計測した後に,電場印加下での構造物性を調べる.また,SPring-8において開発した時分割構造計測システムを用いて,初年度,マイクロ秒レベルの時分割実験に成功し,高い評価を得た.しかし,それ以上の時間分解能での実験を行えていない.今後,ナノ秒やピコ秒レベルの時間分解能で圧電材料の構造歪みを計測することを目指す.
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