2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模伝導計算による有機半導体のキャリア機構の解明
Project/Area Number |
23360018
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 伸彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (10311341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00585127)
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Keywords | 有機半導体 / キャリア / 伝導 / 理論 |
Research Abstract |
次世代電子デバイスとして期待される有機半導体のキャリア伝導機構の解明を理論的に行うことを目指している。構造が柔軟・フレキシブルで環境に優しい高性能有機半導体トランジスタの伝導機構の解析を行い、カーボンナノチューブ・グラフェンなどのナノカーボン材料を用いたトランジスタとの比較検討により究極の高移動度キャリア伝導を実現するための材料・デバイス設計を行うことを目的としている。 初年度はまず数値計算プログラムの整備・試験計算・データの可視化のための計算機環境を整え、時間依存拡散伝導法の発展のための準備をした。そこで、有機半導体の伝導機構を解析するため、バンド伝導からポーラロン伝導までを統一的に扱える量子伝導計算法へ拡張した。この手法では、電子波束の時間発展計算と、荷電キャリアに伴う格子ひずみや分子の熱揺らぎを記述する分子動力学計算を連立させて解き、有機半導体で重要と考えられているHolstein型電子格子相互作用とPeierls型電子格子相互作用の両方を等価に扱うことができる。これを有機半導体の伝導解析に適用し、移動度と平均自由行程の温度依存性や、不純物、トラップポテンシャルによる効果を明らかにした。また、有機半導体の伝導機構の解明において有機分子の分子間相互作用の効果の解析が重要であるため、密度汎関数理論に基づく第一原理計算により有機分子の電子状態、分子間相互作用、電子格子相互作用の解析を行った。その結果を用いて有機半導体のキャリア伝導の解析のための理論的方法論を発展させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有機半導体のキャリア機構の解析を進めるにあたって、分子間相互作用の効果が重要なことがわかった。その効果を密度汎関数法を用いた詳細な計算によって取り扱い、伝導解析の理論的方法論が当初の計画以上に発展している。
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Strategy for Future Research Activity |
分子間相互作用の高精度な計算が可能になり、この効果を取り込んだ時間依存波束拡散法により様々な有機半導体のキャリア機構を解析し、バンド伝導からホッピング伝導までの理論的な解明を進める。
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